AWSには使って初めて分かるポイントがさまざまある。先行してAWSを本格導入したITの現場は、想定外のトラブルに直面し、それを乗り越えて安定運用に至っている。コスト、可用性、データ連携、システム移行、運用性というテーマに分け、10社の現場から効果が実証済みの成功ノウハウを学ぼう。
AWSは必ずしも安くない─。「工夫せずに使うと、従量課金のランニングコストが“想定外”に高くなる」(ISIDアドバンストアウトソーシング アドバンストテクニカルサポート事業部 プラットフォームサービス3部 久保敦志氏)。そう指摘する声は多い。
そんなコストの想定外に対する、ロート製薬とイベントレジストのIT現場の取り組みを紹介する。
ロート製薬
こまめな停止でコストを半減
「AWSを使ってみて分かったが、従来のように24時間365日稼働させると、オンプレミス環境より高くつく」。ロート製薬の古川尚良氏(情報システム部 部長)はこう指摘する。
同社がAWSを導入した目的の一つは、コスト削減である。オンプレミス環境よりコストが上がっては本末転倒だ。
そこで古川氏らが取った対処策は、仮想マシンの稼働時間を減らすことだった。「仮想マシンを停止している間はコストがほとんどかからないので、稼働時間を減らせばコスト軽減に直結する」(古川氏)。具体的には二つの方策を講じた。
一つは、利用時間外のサーバーをこまめに停止(シャットダウン)することだ。サーバーワークスのAWS運用管理ツール「Cloudworks」を利用し、事前に設定したスケジュールに沿って、仮想マシンを自動的に停止/再開する。
もう一つは、システムごとに稼働する曜日や時間を絞り込むことだ。これを徹底するため、新システムの構築時に「申請書」を提出するルールにした(図1)。申請書では情報システム部のエンジニアが利用部門の担当者と交渉し、システムを稼働させる曜日や時間帯を、業務に支障のない範囲で切り詰める。それによって決まった曜日や時間帯をCloudworksに設定し、自動的に仮想マシンを停止/再開する。
こうして仮想マシンの稼働時間を減らした結果、「定常的に使用している仮想マシンで約50%、検証用の仮想マシンでは約40%のコスト削減になった」(古川氏)という。
ロート製薬のように、システムの利用時間を絞り込むITの現場は多い。例えば全農ビジネスサポートは、AWS上の会計システムの利用時間を午前7時から午後11時までと設定した。それ以外の時間は、会計システムの仮想マシンなどを自動停止している。