これまでの連載では、BtoB企業のリード育成にまつわる、営業担当者が顧客と接する前に顧客接点を構築することの重要性のほか、リードの興味・関心に即したコンテンツを発信する方法とその核となるBtoBコンテンツマーケティングについて述べてきました。

 最終回となる今回は、足元の施策から中長期的なBtoBマーケティングの展望へと視点を移し、今後のBtoBマーケティングの高度化の流れ、そしてその流れを牽引する新興のテクノロジーについて説明します。なお、新興テクノロジーをBtoBデジタルマーケティングへ活用する際の注意点についても触れますが、新興テクノロジーの詳細な解説は割愛します。

BtoBマーケティングの高度化-顧客接点の拡張と自動化-
BtoBマーケティングの高度化-顧客接点の拡張と自動化-
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BtoB デジタルマーケティング高度化の方向性とは

 筆者はBtoBデジタルマーケティングの高度化の方向性を、「顧客接点の拡張」と「顧客接点の自動化」という二つのベクトルで考えています。

 「顧客接点の拡張」は、これまで見えていなかった顧客接点を捉えて活用することです。BtoBデジタルマーケティングの見込み客(リード)の育成では、獲得したメールアドレスや会社名、電話番号などのコンタクト情報や、自社ウェブサイトといったオウンドメディアのウェブページ閲覧履歴などを基に、リードの興味・関心に則した情報を発信することで、顧客へと転換しています。

 従来はメールアドレスの登録が起点でしたが、これからはメールアドレスを登録する以前の他社ウェブサイト閲覧データや広告のインプレッションなどのオンラインデータなどを収集してこれを活用し、デジタルマーケティング施策の効果をさらに高めていく流れが加速するでしょう。広告データを含む、未活用の顧客情報やウェブサイトの閲覧履歴といったデータの活用は、2012年時点で国内に60兆円超の効果をもたらしたという推計もあり、これからも活用が期待されています 1

 また、インターネット広告は2桁成長を続けており2 、BtoB企業による利用も広がっています。今後のBtoBデジタルマーケティングでも、自社が捕捉する顧客データを拡張する動きが加速するでしょう。

 次に「顧客接点の自動化」は、ウェブサイトに設置しているフォームやチャット、または電子メールによる問い合わせ窓口などの顧客接点の運営を、人工知能(AI)などの新興テクノロジーを活用して効率化することです。

 AIは、人間では不可能な24時間365日の稼働耐性を持ち、効率的かつ高い応対精度で顧客に接することができます。AIの活用は、多忙なマーケターの時間を節約するだけでなく、それによって生み出された時間を他の業務に再投資できるようにします。

 AI技術によって根本的に働き方が変わり、人間がすべき業務が最適化されることで、労働生産性は最大で40%高まるとも予測されています 3。AIがもたらす経済価値は、生産材・消費財を問わずビジネスに与える影響も大きいと考えられており4 、BtoBデジタルマーケティングを高度化する要素にもなるといえます。


1 “ビッグデータ活用、全産業の売上高60.9兆円押し上げ”, 日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS15001_V10C14A7000000/
2 “2015年日本の広告費”、株式会社電通
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2016/0223-008678.html
3 アクセンチュアプレスリリース(2016年11月17日)
https://www.accenture.com/jp-ja/company-news-releases-20161117?src=BADV
4 “Artificial Intelligence, Employment and Income”, Nils J. Nilsson, Stanford University,
http://ai.stanford.edu/~nilsson/OnlinePubs-Nils/General%20Essays/AIMag05-02-002.pdf

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