前回はBtoB購買活動のデジタル化、およびBtoB顧客のデジタルシフトに合わせて着目されるデジタルリード育成について触れました。そして、デジタルリード育成を売上げ増加というビジネスインパクトとして捉えて、プロジェクトを推進する事の重要性について述べました。第2回目となる今回は、デジタルリード育成の効率化、つまりは販売管理費を減少させる施策という観点で見ていきます。

 デジタルリード育成を効率化する、という視点で見るには、マーケティングオートメーション(以下、MA)という仕組みと合わせて理解する必要があります。

 MAとは、デジタルマーケティングの実行作業を自動化するためのシステムです。MAによって、自社の顧客や潜在顧客のキャンペーンメールに対する反応、Webサイト閲覧履歴など、マーケティングアクション実行に必要なデータをワンストップで管理し、自社商材への関心が高まったリードに対して適切なタイミングで営業活動を展開できるようになります。

 MAの主な機能は以下のようなものです。

・会社名・業種・メールアドレスといったコンタクトデータ、メール配信・開封、Webページ閲覧といった履歴データをもとに、リードをグループ分けするセグメント設計機能
・特定のグループにメールを配信するメール配信機能
・メールの文面やWebページなどを作成・保管する機能
・実行した結果を評価するリード・スコアリング、および結果を数値化し閲覧できるようにする各種レポート機能

 MAの大きなメリットのひとつは、マーケティング・営業業務の効率化です。デジタルリード育成に必要なデータを保持し、リード育成プログラムの設計、メール配信・コンテンツ/フォーム公開といった実行と効果測定を、ワンストップで実施できるようになるのです。

(アクセンチュア作成)
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(アクセンチュア作成)

 デジタルリード育成においては、メール、Webページ、ダウンロード可能なホワイトペーパー、ウェビナー(Web会議システム)などのデジタル顧客接点を活用したマーケティングアクションを実行します。キャンペーンメールの配信というようなアクション実行結果や、Webページを閲覧したかどうかといったような企業のアクションに対するリードの反応結果は、膨大な量のデータとなります。

 キャンペーンメールの配信を例に考えてみましょう。まず、キャンペーンメールを作成するとともに、メールの中に記載したURLから到達できるWebランディングページと、詳細なコンテンツを含む深層ページを用意します。そしてメール配信の結果、例えば、メール配信対象数5万件に対して、配信成功件数は4万9000件、メール内リンクのクリック数は4900件、最深層のコンテンツの閲覧数は3900件だったとします。

 さらに1つのリード育成プログラムとして同一メールを3回配信し、四半期に5つのリード育成プログラムを展開したとしましょう。この場合、マーケティング担当者はそれぞれのリードが、どのように反応したかを把握するため、膨大なリードレコードをトラッキングし、管理・分析を行う必要があります。

 MAシステムが無いと、こうした一連のリード育成プログラムを実行するにあたって、相当の工数が発生します。個々のデータを別々にExcelなどのスプレッドシートで保管し、リード単位で結合処理してアクション結果を把握する必要があり、データ処理だけで多くの時間がかかります。実際のリード育成プログラムは、上述の例よりはるかに複雑です。Webサイトの構造は深くなり、ホワイトペーパーのダウンロードやセミナーへの申込み・来場履歴などの多数の顧客接点データを組み入れる事も多く、スプレッドシートなどで管理しようとすると、その業務は非常に煩雑なものになります。

 また、属人的な管理の問題も無視できません。個々のデータがスプレッドシートとして担当者のパソコンに保持されていれば、担当者がいないと実行状況はわかりません。別の担当者が同様のリード育成プログラムを実行する場合、過去データの紛失などにより経験を共有できず、ゼロからやり直しといった問題も起こりえます。

 前回、リード育成における顧客に役立つ情報、コンテンツの重要性について触れました。リード育成コンテンツを制作するには、事業部・営業部・広報部などの関係者を巻き込み、「自社の顧客は誰なのか」、「何をしているのか」、「何を提供すれば喜んでくれるか」などを検討する事が重要です。部門によって顧客とニーズの定義・粒度が異なることも多いだけに、共通の理解を得るにはかなりの時間をかける必要があります。部門横断的なリード育成コンテンツの検討・制作というクリティカルなプロセスの時間を確保するためにも、リード育成作業の効率化、つまりはMAが欠かせません。

 さらに、リード育成プログラムの実行段階に入ると、マーケターは活動実績の報告を求められます。プログラムが全社的な活動となれば、自部署内だけでなく、検討・実行に関わった他部署からも状況を聞かれることになるでしょう。特定セグメントに属するリードの育成状況や、過去のキャンペーンに参加したリードの育成状況など、他部署からは自部署とは異なる視点での情報提供も求められます。

 リード育成のデータを属人的に管理していると、これらの情報提供依頼に個人で対応することになり、多くの時間をレポーティングに割かざるをえません。ただでさえ、マーケティング部門がこなすべき作業量に対してリソース不足が問題視されています。リード育成を実施する際、作業負荷を軽減するための施策は必須です。それが、MAを導入すべき理由となります。

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