PCやスマートフォンから手軽に使えるオンラインストレージ。写真や動画の保存先として活用している読者も多いだろう。オンラインストレージサービスの中には、パブリッククラウドサービスで有名なアマゾンのAmazon Web Services(AWS)にインフラを構築してサービスを提供している企業もある。この場合、写真などのデータ保存先としてAWSが提供しているオブジェクトストレージサービスを使用している。
クラウドサービスの世界において、ストレージの主役と言えるほど活用されているのはオブジェクトストレージだ。少しおさらいしておくと、オブジェクトストレージでは、管理するファイル(オブジェクト)にIDを付与して管理する(図1)。本連載の「第3回 サーバーベースのストレージ」および「第4回 データアクセス方式によるストレージ分類」でオブジェクトストレージのアーキテクチャーやアクセス方法について解説しているので、そちらも参照してほしい。
今回は、パブリッククラウドとして提供されているオブジェクトストレージを使うクラウドストレージサービスの仕組みや活用シーンについて解説したい。
クラウド時代に最適なストレージ
パブリッククラウドとして提供されているオブジェクトストレージサービスとしては、AWSの「Amazon Simple Storage Service(S3)」が広く知られている。Amazon S3は、前述したオンラインストレージや動画配信、SNSなどクラウドサービスインフラのデータ保管先として活用されている。
また米NASDAQでは、毎日取り引きされている何十万件もの取引情報をAmazon S3に保存し、専門家やアナリスト向けに提供しているという。これらの活用シーンでは、いずれも扱うデータ容量が巨大である点とコンテンツ数が膨大である点が共通している。
一方、以前から企業のITシステムにおける大量のデータ保存先と言えば、ファイルストレージであった。それでは、なぜクラウドサービスではオブジェクトストレージがこれほど活用されているのだろうか。オブジェクトストレージを理解するために、ファイルストレージとの比較から始めてみよう。