今回から「最新ストレージ技術」をピックアップして、そのコンセプトやテクノロジーを紹介する。最初のトピックとして「Software Defined Storage(SDS)」を取り上げる。
ここ数年、多くのストレージベンダーがSDSというキーワードを多用して、自社製品の先進性をアピールしている。しかし各社のSDS製品を見比べてみると、機能やアーキテクチャーがさまざまでSDSという言葉はかなり広い意味で用いられていることが分かる。
そこでまず、SDSの概念を整理してみよう。これにより、SDSが最新ストレージ技術として注目されている理由や背景についての理解が深まるはずだ。
1.そもそも「Software Defined」とは?
ITベンダーが「Software Defined xxx(SDx)」という言葉を多用するようになったのは、ここ数年である。まず、その背景やニーズを整理してみよう。
インターネットやモバイルデバイスの普及に伴い、企業はITに対してスピードや俊敏性を強く求めるようになってきた。ITシステムやアプリケーションが、競合他社に対する優位性を獲得する重要なツールとなり、それに伴いアジャイル開発手法(全ての要求を一括してシステム化するのではなく、少しずつ開発し続けていく開発手法)やクラウドサービスの活用が注目を集めている。
従来のITインフラは、アプリケーションやシステム要件に合わせて、サーバー、ネットワーク、ストレージといったハードウエア機器をつど調達して構築していた。しかし、特にスピードや俊敏性においてビジネスニーズとのギャップが問題視され始めた。
そのような中で出てきたアイディアが、ITインフラの「ソフトウエア化」であり「SDx」という考え方だ。これまでの属人的なインフラの構築作業や運用を、ソフトウエアで制御しやすい仕組みに変え自動化を進めることで、ユーザーやアプリケーション開発者がオンデマンドにITリソースを活用できる環境を実現できる。
図1に、SDxが実現する具体的なITインフラ運用イメージを示した。テクノロジーは「自動化」がベースとなる。それに加えて、「定義済みサービスレベルに応じたポリシーベースである」こと(これは、ディスクやCPUの使用率などについて、最低限満たすべき値をあらかじめサービスレベルとして設定。それに沿う形で自動化が行われるという意味である)も、SDxの重要な要素だ。また、Application Programming Interface(API)を介して、ほかのシステムから制御したり連携したりできる点も、SDxの重要な要素といえる。
表1に、主要なSDxの種類とその略称について整理した。