個人の座席を決めず、毎日自由に席を選ぶフリーアドレスオフィス。1990年代後半から、外資系企業やIT企業を中心に導入事例が増えてきた。

 主たる狙いはオフィススペースの削減。外出が多い社員の座席を、ほかの社員が使えるようにすることでスペース効率が高まる。

 こうした効率重視の考えとは逆のアプローチでフリーアドレスに移行したのがカルビーだ。狙いは「イノベーションの創出」。社員同士のコミュニケーションを増やすことで、アイデアの創出を促す。

 コニカミノルタは、フリーアドレスの導入時に社員の知恵を集め、対話が増える仕掛けを盛り込んでいる。

雑談歓迎、新事業のタネ育む
カルビー

 東京駅に隣接したオフィスビルにあるカルビー本社23階。約200人の社員が働くオフィスには、壁や仕切りがほとんど無く、端から端までを見渡せる。

(写真撮影:村田 和聡)
(写真撮影:村田 和聡)
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 見通しの良さと同様、風通しも抜群だ。オフィスの至るところで会話をする社員たちの姿がある。ミーティングテーブルや会議室はもちろん、社員のデスクや廊下など、様々な場所で真面目に仕事の議論をし、時には雑談に花を咲かせる。

 カルビーのオフィスは、個人の座席を決めないフリーアドレス制。社員は後述する仕組みを使って、毎朝自分の座席を決める。同じ席に座れるのは最大4時間。期限が来ると、再び同じ仕組みを使って新たに座席を決め、ノートパソコンとPHSを持って移動する。

 近くに座る社員はそのたびに変わる。ほとんどが違う部署の社員だ。隣で交わされる会話は自然に耳に入ってくる。「面白そうなお話ですね。よかったらちょっと教えてくれませんか」。そんな一言から始まる会話が、新しい仕事のアイデアや、部門の壁を越えたコラボにつながることも少なくない。

 そこから新しい取り組みが生まれる。「ポテトチップス」や「じゃがりこ」などの主力商品は、季節や地域ごとに味を変えた新商品のラインアップを拡充。2011年には直営店「カルビープラス」の出店も開始した。揚げたてのポテトチップスにチョコレートなどをトッピングして食べられるとあって、開店前から行列ができる人気ぶりだ。

 2014年3月期には7期連続の増収増益を見込む。「フリーアドレスの効果を定量的に測定することはできないが、会話の多さが活性化につながっていることを実感する」。フリーアドレス導入プロジェクトに携わった後藤綾子広報部部長は話す。

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