フラッシュメモリーを全面搭載した「フラッシュストレージ」。新興ベンダーに加え、大手ベンダーの製品も出そろった。HDDとは桁違いの高速性を生かす仕組みと、寿命を延ばす仕組みを紹介する。

 フラッシュメモリーを全面的に採用したストレージ「フラッシュストレージ」の新製品が2013年から相次いで登場している。米Fusion-io、米Violin Memory、米Pure Storageといった新興ベンダーが先行していたが、米EMC、米HP、米IBM、米NetApp、米Dell、日立製作所といった大手ベンダーが次々と発売。バリエーションが広がった。

ランダムアクセスを高速化

フラッシュメモリーを搭載したモジュール(写真提供:日本IBM)
フラッシュメモリーを搭載したモジュール(写真提供:日本IBM)

 フラッシュストレージの特徴は、ランダムアクセスがハードディスクドライブ(HDD)のストレージと比べて桁違いに速いことだ。

 ストレージのI/O性能は、1秒当たりの処理I/Oリクエスト数を意味する「IOPS」(Input/Output Per Second)で表す。小さいサイズのデータに対するランダムアクセスは、一般的なHDDの場合、100~200IOPSとされる。一方、フラッシュストレージの場合、ランダムアクセスのI/O性能は、ストレージベンダーの公称値で10万~100万IOPS以上。HDDと比較すると、数百~数千倍の性能が出る計算になる。

 HDDのようにディスクを回転させたりヘッドを移動させたりといった動作が必要ないことなどが、ランダムアクセスにおける大幅な高速化につながっている。

 ランダムアクセスが高速という特徴は、最近の企業情報システムで広がる用途で価値が高い。サーバー仮想化やデスクトップ仮想化、ビッグデータ分析などのことだ。これらはいずれも、ランダムアクセスの高い性能が求められる。

 例えば仮想環境は、一般に複数の仮想マシンで1台のストレージを利用する。そのため、ストレージ内の領域を区切って仮想マシンに割り当てる。Pure Storageのストレージを販売する東京エレクトロンデバイスの岩田郁雄氏(CN事業統括本部 CNプロダクト事業部 事業部長代理)は、「各領域の仮想マシンがそれぞれI/O処理を要求するため、ランダムアクセスが多発する」と指摘する。

 ランダムアクセスの高速性能を評価して、ユーザー企業の間でフラッシュストレージの導入が進んでいる。例えば医薬品卸のスズケンは2014年3月、営業支援システムに利用する共有ストレージを更新するに当たり、IBMのフラッシュストレージ「FlashSystem 840」を選択した。これ以外にも、「幅広い業種から、多種多様な用途で引き合いがある」と、日本IBMの佐野正和氏(システム製品事業本部 ストレージセールス事業部 ソリューション部長 システムズ&テクノロジー・エバンジェリスト)は話す。

 ガートナー ジャパンの鈴木雅喜氏(リサーチ部門 ITインフラストラクチャ&セキュリティ リサーチ ディレクター)は、「新技術を使った製品は段階的に浸透していくものだが、フラッシュストレージは多くの企業が一斉に導入に前向きになっている」と指摘。早ければ今後数年で、企業のビッグデータ分析が一段と広まり、それを支える基盤としてフラッシュストレージが普及すると予測する。

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