組織化は思考プロセスの見える化からスタートする

 連載第2回では、「現場改善のプロセス整備は3つのSTEPで実践」と題し、Webサイトのデータ活用を成功に導くための「プロセスの整備方法」を紹介した。最終回となる今回は、整理したプロセスをどのようにして組織レベルで運用するかを解説する。

 “組織レベルでの運用”とは、データの活用が属人的な業務とならないようにするための仕組みを作り、各部署が同じレベルで業務を遂行できる状態を指す。そのような状態を作るために、最初に取り組むべきは「思考プロセスの見える化」だ。

 “思考プロセス”は、前回解説した「業務に関するプロセス」ではなく、どのような考え方で各業務が行われているかという部分を強調するため、あえて“思考”と表現している。組織で動こうとすると、どうしても関係者のスキルレベルにバラツキが出てしまう。それを改善するためには、どのような思考プロセスで各業務を実施した(された)かを見える化し、全員が同じ考え方で業務を遂行できるようにすることが有効だ。思考プロセスを見える化することで、経験の浅いメンバーが何につまづいているのかを知ることができるし、フォローすべきことや強化するべきポイントが浮き彫りになる。思考プロセスの見える化は、共通したフォーマットを準備して運用していくことで、容易に実施できる。

 今回、より具体的なイメージを持てるよう、筆者が実際に現場で使っているフォーマットなどを交えながら解説しよう。

1.思考プロセスを見える化・チェックするフォーマット

 以下のフォーマットは、データを活用して施策を導き出すための思考プロセスを全社で共有する際に、考えるべきポイントやその順番を分割し、穴埋め式にしたものだ。どのようなポイントをどの順番で考えていくかを明らかにすることで、思考プロセスを共有することができる。また、重要なポイントの検討漏れを防止するのにも役立つ。

ABテストをする際のテスト設計書のフォーマット例
ABテストをする際のテスト設計書のフォーマット例
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 次に紹介するのは、上記のフォーマットを埋めるための考え方をまとめた、いわば教科書のようなものだ(一部を抜粋して紹介)。単にフォーマットを埋めろと言われても、どのようにまとめたら良いのかわからないメンバー向けに、レクチャー用として使用する。先ほどの穴埋め式のフォーマットと組み合わせ、「教科書とドリル」のような関係で、実際に読みながらメンバーに手を動かしてもらう。こうすることで個々人の理解を深め、組織に思考プロセスを浸透させていく。

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2.キャンペーン計画書

 日々の運用の中で必ず発生するキャンペーンについても、PDCAサイクルを回すためにはデータを使って計画書を作成するとよい。つまり、「キャンペーン計画シート」だ。Webアクセス解析データを元に、キャンペーンの目標を立てて計画的に数字を追っていく。ここでのポイントは、予算に依存する広告からの集客だけでなく、Webサイト内からどのように集客するかもしっかりと計画していきたい。

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 キャンペーンに、どこからどれくらいの人を呼んでくるか、それらの人がどれくらいの率でゴールに到達するかを計画し、実施時にはそのGAPを検証することで、どんどん精度の高いプランが立てられるようになる。それだけでなく、異動してきた新しいメンバーが過去の取り組みを素早く把握し、慣れるまでの期間を短縮できる。

 今回紹介したようなフォーマットや計画書を用いて、思考プロセスを見える化した情報を蓄積することにより、組織全体で業務の標準化とノウハウの蓄積を実践してみてほしい。

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