日経情報ストラテジー編集長の小林 暢子
日経情報ストラテジー編集長の小林 暢子

 「部下に仕事を任せるには、部下の能力や強みをしっかり見立てなくてはなりません。富士山に登れる筋肉と、高尾山に登れる筋肉は違いますから。『この人の強みは何か』『この人は何を大切にして働いているか』を見極めて、どんなミッションを与えるかを考えないと」――。

 先日取材したリクルートスタッフィング(東京・中央)の柏村美生社長はこんな話をしてくれた。20代でゼクシィ中国事業の立ち上げに携わり、その後も様々な新事業の立ち上げや既存事業の再構築などを経て、2016年4月にリクルートグループ唯一の女性社長に就任した。部下の強みを生かして“頼る”マネジメントが得意といい、そのために部下の能力や強みを見極める観察眼を磨いている、という話には説得力があった。

 柏村社長はこう続けた。

 「部下を知るためにはまず、『自分を知る』ことが必要でした」。

(撮影:村田 和聡)
リクルートスタッフィングの柏村美生社長
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 自分の強みや弱み、価値観を把握していれば、自分が強い部分では他のメンバーをサポートし、弱い部分では他人を頼ろうと判断できる。とはいえ、自分を客観視することは難しい。図太いと自負していても意外に傷つきやすかったり、「仕事なんて適当でいい」と冷めているつもりでも実は執着していたり。

 柏村社長は中国事業の立ち上げ時に、現地スタッフと「分かり合えない」という悩みを抱えていた。そこで意識的に内省を繰り返し、自分の像を客観的に描いて、他者との差異を明らかにできるようにした。その習慣がその後のマネジメントにも役立っている。

 

 このエピソードを聞いて以来、自分も内省を心掛けてみたのだが、忙しいときは時間が取れないし、時間があるときはもっと別の楽しいことをしたくなる。自分について考え出すと、過去の失敗や人間関係のトラブルなども思い出す。内省とは、かなり意志の力を必要とするのだと思い知った。

 そんな中でたまたま、「自分を客観的に判定するITサービス」の取材の機会に恵まれた。相手は人材アセスメントサービス大手、米ワイリーのバイスプレジデント、ジュリー・ストロー氏だ。