日経NETWORK編集長 森重和春
日経NETWORK編集長 森重和春

 「サーバーやストレージが仮想化され、次はネットワークだ」。ネットワーク関連ベンダーの担当者のプレゼンで、こうしたメッセージを聞くことが多い。確かに今後、ネットワークの仮想化が進んでいくことは間違いないだろう。しかし、「サーバー仮想化やストレージ仮想化の導入が広がったのと同じように、ネットワークも一気に仮想化が進む」という論調で言われると、素直には納得できない。

 上記のようなコメントでいう「仮想化」は、主に「SDN(Software Defined Networking)」の導入についての話だ。SDNは、2012年頃から大きな注目を集めているキーワードだ。SDNはこれまで大規模なデータセンターで先行して導入が進み、今後はいよいよ企業ネットワークに導入が広がるといわれている。

 しかし筆者は、特に企業ネットワークにおいては、サーバー仮想化と同じようにSDNの導入が加速度的に広がるとは思っていない。実際、SDNを導入した企業はまだ少数派といえそうだ。日経コミュニケーションが同誌の読者を対象に2017年2月に実施した調査によると、SDNの導入企業は5.8%にとどまっている。

 サーバー仮想化は、2010年頃に導入が急拡大した。しかし企業でのSDN導入意欲はその頃のように高まっているとは思えない。サーバー仮想化とネットワーク仮想化では、普及期にユーザーが導入を決断する動機が異なると思うからだ。

コスト削減で説得できない

 ITの分野で新しい技術が広がる最もわかりやすい動機はコストの削減だ。コストが下がるという提案をIT担当者が経営者に上げれば、稟議は通りやすい。

 サーバー仮想化では、1台の物理サーバー上で複数の仮想サーバーを動かすサーバーの集約によって、物理サーバーの台数が減り、コスト削減効果を明確に見積もれた。これが、サーバー仮想化の導入を後押しした。必要なときにサーバーを短期間で導入できたり、障害発生時のバックアップがしやすかったりというさまざまなメリットがあったが、経営者には、コスト削減効果が最大の説得材料だった。

 SDNの場合は、このコスト削減効果を説明するのが難しい。