日経FinTech編集長 原 隆
日経FinTech編集長 原 隆

 2017年7月2日に投開票が行われた東京都議会議員選挙は小池百合子知事が率いた「都民ファーストの会」の圧勝で終わった。定数127議席のうち、都民ファーストは49議席を獲得し第一党に躍り出た。知事支持勢力である公明党を含めると79議席と、過半数を大きく上回った。対する自民党は2009年に記録した過去最低議席38議席を大きく下回る23議席。浮動票を多く抱える東京都だけに、自民党による相次ぐ不祥事や不規則発言が都議会選に影響を与えたのかもしれない。

 今回の選挙で、東京・築地市場の豊洲移転問題は、小池知事が告示日前に一定の方針を示したことで、争点にはならなかった。今後、築地再開発の財源問題、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けた諸問題の解決などに都民の目が注がれることになるのだろう。

 だが、筆者が気にかかるのはこれらの問題ではない。小池知事が6月9日の会見で発表した「『国際金融都市・東京』構想骨子」のゆくえだ。

東京の希薄な存在感

 今秋にも正式にまとめる予定の「東京版金融ビッグバン」の骨子となるものだが、この中では「かつてロンドン、ニューヨークと並ぶ国際金融都市であった東京が、世界に冠たる国際金融都市としての地位を取り戻すためには、今回がラストチャンスとの危機感を持って、構造的・本質的な課題に踏み込み、抜本的な克服策を見出していかなければならない」とうたっている。香港やシンガポールの台頭で、アジア圏における金融センターとしての東京の存在感が薄れていることに対し、危惧が示されている。

 この骨子を取りまとめたのは小池知事や国内外の有識者で構成する「国際金融都市・東京のあり方懇親会」。2016年11月に設置され、その後、金融の活性化や海外の金融系企業の日本進出時の障害、課題解決に向けた施策について議論を重ねてきた。

 この中で東京都は、FinTechをはじめとする先進分野に積極的なリスクマネーが投じられ、産業を活性化させることが成長戦略の中核になると主張している。

 提言している施策は多岐にわたる。