日経コンピュータ編集長の大和田 尚孝
日経コンピュータ編集長の大和田 尚孝

 ソフトバンクグループは2017年5月20日、サウジアラビアの政府系ファンドなどと10兆円規模のファンドを設立したと発表した。

 米アップルや米半導体大手クアルコム、シャープなども参加し、米トランプ大統領の中東訪問に合わせて発表する派手な演出で華々しくスタートすることになった巨額ファンド。ソフトバンクの孫正義社長が設立を決めたきっかけは、ある出来事からだった。

 タイトルに「水晶玉」と付けたが、占いで決めたわけではもちろんない。世の中を変える可能性を秘めるIT企業を世界中から厳選して出資し、ハイリターンをめざす。

 ソフトバンクが10兆円ファンドを設立すると最初に発表したのは2016年10月。その1カ月前にサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン副皇太子が来日した際に孫社長が直接提案し、意気投合して構想が動き出した。

 なぜこのタイミングで孫社長は10兆円ファンドを提案したのか。「きっかけは、会談の2カ月前に発表した英アームの買収にある」。ソフトバンク関係者はこう話す。

 アームは半導体チップの設計情報をCPUメーカーに提供してライセンス料を得る独自のビジネスモデルを持つ。省電力や小型化の技術に強く、スマートフォン向けのCPU市場では95%以上のシェアを確保している。ソフトバンクは将来性を見越し3兆3000億円で2016年7月に買収を発表。9月に買収を完了した。

 あらゆるものがネットにつながるIoT(インターネット・オブ・シングス)の時代が訪れると、組み込み機器などのCPUの需要が増えるため急成長する、と見込んでの買収だったと言われている。