本連載を開始して、5回目の年末年始を迎えた。日頃のご愛顧に感謝しつつ、まずは2015年を振り返ってみたい。

 2015年はとにかく話題が豊富な年だった。思いつくだけでも、MVNO(仮想移動体通信事業者)の台頭、日本年金機構の大規模漏洩、個人情報保護法の改正、IoT(Internet of Things)/AI(人工知能)ブームの到来、FinTechへの注目、などがある。2015年秋には安倍晋三首相による携帯電話料金引き下げ指示に端を発する、水面下を含めた様々な検討が進んだ。

 その一方で「大山鳴動して鼠一匹」といった類のトピックも散見された。米アップルの「Apple Watch」に代表される時計型デバイスはさほど目立たなくなり、日本の映像配信を変えると意気込んでいた米ネットフリックスも伸び悩んでいる。結論を急ぐべきではないのかもしれないが、最終消費者向けの製品やサービスは、消費者に受容されたという感覚が得られないと、継続するための「勢い」が失われやすいのも事実だろう。

スマホ経由のネット利用時間が減る

 こうして2015年のトピックを並べて見ると、「ホームランか三振か」といった印象を受ける。筆者はその背景として、日本でもようやくスマートフォンが全国規模で定着し、市場が成熟したことが影響していると考える。

 そう思ったきっかけは、2015年12月3日付けで日本経済新聞が報じた、「スマートフォン利用者のインターネットの平均利用時間が減っている」という総務省の調査をベースにした記事を見たことだ。記事ではその理由を「ライトユーザーの増加で全体の利用時間が押し下げられたのではないか」と分析していた。

 この調査結果は、筆者の実感とほぼ一致する。2015年は「まちづくり」のお手伝いをする機会が多かったこともあり、国内出張が増えた。都市部に限らず人口密度の低いエリアでも、スマートフォン利用者がもはや多数派である。かばんからフィーチャーフォン(いわゆるガラケー)を取り出した筆者がむしろ目立つくらいだ。

 ただし、スマートフォンで使っているアプリを尋ねても、種類はそう多くはない。Webメール、Yahoo!、それ以外はゲームが主流で、残りは少数がLINEやtwitterを使っているという程度である。それも実際にはあまり起動せず、メールやメッセージが届いた時だけ立ち上げるというスタイルだ。まさに前述した記事の分析通りである。