2014年もあっという間に過ぎた。振り返ると通信業界では相変わらずいろいろなことが起こった。年末年始に読まれている方も多いと思うので、お休み気分に乗じて、個人的な雑感を記させていただきたい。

端末の多様性が失われた

 まず通信業界全体についての正直な感想として、2014年はあまり面白い動きはなかった。そもそも面白さで評価するものではないし、業界の中で様々なことが起こったのも重々承知だ。しかし何か強い印象に残ることがあったかと問われれば、残念ながら思い出せない。

 その要因は、端末の多様性が失われたことが大きいと考えている。日本では既に「iPhoneかそれ以外」という状況になって久しい。2014年はソニーの「Xperia」が停滞したこともあり、その状況に拍車がかかった印象だ。

 本来であれば、一つの端末による寡占状態に近づけば、新しい展開が期待されるはず。たとえばインフラでいえば、回線周りの設備競争や、関連する付加価値サービスの開発に各事業者が知恵を絞り、そうした競争の恩恵を消費者が享受できるはずだ。

 しかし端末の寡占化で実際に起きていることといえば、MNP(モバイル番号ポータビリティー)による単なる顧客の奪い合いだ。消費者はキャッシュバックという形で一時的に利益を得るものの、その代償として様々な契約に縛られ、小さな不都合が乗り換え直後からやってくる。それが時間とともに堆積していけば、通信事業者へのロイヤリティーなどはとてもではないが期待できない。

 2014年度初めに一時沈静化したと思われたキャッシュバック競争だが、その後、じわじわと復活を遂げている。構造的な要因である以上、2015年春も恐らくこの傾向は続くだろう。

 このような通信事業者の間隙を縫って、MVNO(仮想移動体通信事業者)が都市部を中心に広がり始めたのも2014年の特徴だ。現時点では通信事業者の契約数全体の中で、まだ5%に満たないシェアではある。しかし家計収入が低迷する中、格安スマホという形で市場に定着していくトレンドが見えてきた。