FinTech(フィンテック)についてどう考えればよいのか──。このところ、そんな問い合わせが増えている。増えた、というからには以前から問い合わせはあった。筆者の周辺では、昨冬くらいから関心が高まってきたと記憶している。今年に入ってから、メガバンクがアイデアコンテストを実施したり、9月には金融庁が法整備の検討を始めると報道されるなど、一気に流行の最前線に躍り出た印象だ。

日本は周回遅れか

 FinTechは、金融(Finance)と技術(Tech)をかけあわせた造語である。お金とITに関係する限り、すべからく対象となるため、言葉が示す範囲は極めて広い。電子マネーはもちろん、ビットコインを支えるブロックチェーン技術も含まれる。あるいは消費者向け家計簿アプリや、その先にある電子レシートなどと併せて、有望視されるサービスの一つだ。

 一方、こうした守備範囲の広さや、従来業態とのギャップゆえ、「バズワード」と揶揄(やゆ)されることも少なくない。「結局何だか分からない」という声も聞こえるあたり、少し前のビッグデータに通じるものがある。

 率直に言って、現在の日本社会では消費者レベルで、FinTechの恩恵を強く感じる機会は少ないだろう。理由は、諸外国との「お金」に対する意識や形態、あるいは制度の違いだ。

 例えば、確定申告が原則の米国と、源泉徴収が主流の日本では、そもそも日常生活における「お金の出入り」の意識が大きく異なる。また、クレジットカードの利用履歴が社会における信用度を計測する重要な指標となっている米国に対し、日本ではクレジットカードの利用が伸びているとはいえ、まだまだ「現金主義」である。

 そうした日本ならではの形態や習慣に、日本の金融サービスが過剰とも言えるほど適合しているのは、電子マネーの発達からもうかがえる。こうした状況をして、日本はFinTechの波を乗りこなせず、「周回遅れ」だと指摘する向きもある。確かにそう言わざるを得ない一面もある。