国際プライバシーコミッショナー会議に参加するため、モロッコ・マラケシュに滞在している。今回は所用があったため、パリを経由した。搭乗機はモロッコの航空会社が運航するボーイング787型。新しい機材で定時運行、搭乗も整然と進み、機内食には北アフリカ料理のクスクスも供されて、洗練された印象を受けた。「今回の出張は幸先がいい」。そう思ったのもつかの間、次の経由地であるモロッコの首都カサブランカで問題が起きた。

 夜10時頃に着陸し、接続便のゲートへ向かったのだが、案内が出ない。待つこと数時間、スタッフがまばらになった。聞くと「次便は明朝、当地に1泊するか、手配するマイクロバスで現地へ向かえ」という。早く現地入りしたかったので、バスに飛び乗った。ところが、こちらもなかなか発車しない。窓の外では、急きょ雇われたであろう運転手が、誰かとけんかしている。それが決着したのか、動き出した夜行バスに4時間ほど揺られて、マラケシュに到着したのは翌日の午前だった。

ICT分野で顕在化するギャップ

 パリ・オルリー空港で見た航空会社の人々の第一印象は、筆者にとって違和感のない好ましいものだった。パリというモロッコの人々にとっての「アウェー」で、郷に従ったとも言える。

 それが一転して、モロッコ国内という「ホーム」では粗雑といった印象を受けた。「これくらいでいいだろう」と品質基準を自ら定めて勝手に動き、説明やリカバリーは後回しになっていたように思える。

 このような体験を得て、筆者は古くて新しい「ホーム」と「アウェー」という概念を思い出した。スポーツ観戦などでよく知られている概念だが、ビジネスシーンでもしばしば指摘される。

 その企業や製品が生まれたホームの市場は、もともとそこに向けて製品開発やサプライチェーンが最適化されており、当然強みが発揮される。それは利益をもたらし、アウェーの市場で積極的な展開するための原資にもなる。