9月11日に開催された経済財政諮問会議の席上、「携帯料金の引き下げに向けて検討をせよ」という指示が、安倍晋三首相から高市早苗総務大臣へと飛んだ。民間委員からの提言を受けたものとはいえ、民間事業者が担う営利サービスの料金水準を総理大臣が名指しで言及するのは異例である。

 とりわけ携帯電話事業者は兆単位の営業利益を得ており、国内外でM&Aを活発に行うなど、日本全体の財政からすれば「優等生」である。通信料金の引き下げで利益率が下がれば、税収にも影響する。それでも利益を守ろうとすれば、取引先にも悪影響が及ぶ。そうした副作用も承知のうえでの発言だとすれば、相当なことだと言える。

「とうとう指摘されたか」

 一方、この報に接した筆者の第一印象は、正直「とうとう指摘されたか」というものだった。通信事業者へ経営戦略を助言する中で、「このままでは遠からず糾弾されかねないですよ」という話を、何度も重ねてきたからだ。

 例えば前述の「優等生」という比喩も、裏を返せば消費者に料金という形で利益還元できていないことに“見える”。料金水準は各社で大差なく、あたかも競争がないようにも“見える”。

 留意すべきは、これらの多くは“見える”というだけであって、実態は必ずしもその通りではない─ということ。例えば利益還元は、設備投資の増強による通信品質の向上や、端末料金のインセンティブなどの形で、間接的だが相応に実施されている。