もうしばらくすると、米アップルから最新のiPhoneが発表されるだろう。本稿執筆時点の8月半ばでも、様々な予想記事が飛び交っている。

 日本におけるiOSのシェアが高いため、新iPhoneはそれだけ多くの耳目を集める。今回の新iPhoneはハードウエアのアーキテクチャーが刷新され、iOSのバージョンアップによって、アプリを含めたエコシステムにも影響を及ぼすことが予想される。実は筆者自身もアプリの開発を進めており、気が気でないというのが正直なところだ。

 とはいえ、かつての新iPhone発売時の祝祭のような雰囲気はさすがにもうないだろう。発表を粛々と受け入れ、必要があれば買い替える、といった世間の冷静な受け止め方を感じる。

新奇性よりも安心感

 理由はいくつか思い当たる。まず単純にスマートフォンの普及があるだろう。地方部でも普及率が50%を超えつつある今、スマートフォンはもはや珍しいものではない。特に日本市場のシェアを考えれば、iPhoneはコモディティー化した存在でさえある。新奇性よりも、確実性や安心感のほうが消費者にとって重要な評価軸であるはずだ。

 また、通信事業者による「2年縛り」の影響もある。消費者にしてみればスマートフォンは、自分自身の都合でもなければ、メーカーの提案でもなく、単に“縛り”期間が終わった時に買い換えるものになりつつある。すなわち端末の買い換えは、隔年でルーティンワークと化している。

 こうした販売側の事情による「つまらなさ」に加えて、端末自身の陳腐化も進んでいる。OSやメーカーのいかんを問わず、高速化、大画面化、大容量化、そしてカメラの高性能化を競うばかり。もはや新しいモノならではのワクワク感は感じられない。

 もちろん、細かな機微は今でも重要だ。最終的に消費者はその機微にこそ安定や安心を見出すだろう。だからこそ日本の消費者は、なかなかiOSからAndroid、あるいはAndroidからiOSに移行しない。逆に言えば、安定感を維持することがシェア獲得に寄与するため、従来機能の正常進化しか差別化の方向性が見出せないとも言える。