間もなく日本にデフレが訪れる。こう書くと「縁起でもない」「占い師気取りか」と怒られそうだ。しかし経済指標はそれを暗示している。例えば、7月上旬に発表された2016年5月の消費者物価指数(コアCPI)は、前年同月比で0.4%低下。3カ月連続の下落で、マイナス幅も拡大している。追いかけるように発表された2016年度経済成長率の政府見通しは、当初から半減し、実質0.9%に下方修正された。

 理由は様々だろう。世界経済の不安定化により、ドル円に限らず多くの通貨に対する円高の進展、量的緩和の効果の低下、そして社会保障などの将来への不安など。様々な要因で消費低迷を説明できる状況なのは明らかだ。

 こうした数値の発表を待つまでもなく、現場に敏感な事業者は、既にデフレの再来に備えた準備を進めている。飲食や衣料などの大手事業者は、これまでの価格単価引き上げ策から一転し、今年度下期からは「お手頃感」を打ち出した価格戦略にかじを切ろうとしている。筆者もこうした事業者や資本市場関係者と話をしているが、総じて「少なくとも年末まで個人消費は低調、その先は正直見通せず」という。

直近の先例が役立たない

 では、通信業界にはどのような影響が及ぶのだろうか。それには過去の先例を見てみるといい。先ほどのコアCPIを振り返る限り、日本がデフレど真ん中だった直近は、2008年から2013年頃。年次を振り返ってみると、通信業界に従事している方なら、あることに気がつくだろう。通信業界に関しては、直近の経験はあまり役に立ちそうにないのだ。

 なにしろ、初代iPhoneが発表されたのが2007年。翌年には日本に上陸し、Androidも含めたその後の爆発的な普及はご記憶の通り。