イエ、クルマ、ヘルスケア---IoT(モノのインターネット)の具体的な利用シーンを問われた時、筆者はまずそれらを挙げる。

 人間の身体に近いセンサーとして最も分かりやすいヘルスケア分野は、ウエアラブルコンピューティングの興隆もあって、既に商品化が進んでいる。また、それ自体もセンサーの塊と化しつつあるクルマは、将来的な自動運転の実現に向けて、道路などのインフラ側のセンサーネットワークとの協調が欠かせない。そして家庭では、言わずと知れた情報家電である。

 もちろん、IoTの用途はそれらに限定するものでもない。そもそもIoTの定義さえままならない状態だ。ただ当面、IoTのアーリーアダプターが存在する対象は概ねこの辺りだろう。

 これらに共通しているのは「使う理由が分かりやすい」ということだ。ソフトとハードの両面で具体化が進まない段階では、企業を含めた先進的なユーザーによる牽引が市場発展に欠かせない。当該分野の事業化が視野に入りつつあるのも、アーリーアダプターの「脊髄反射」をうまく引き出しているからだといえる。

既視感や懐かしさがたっぷり

 ところで筆者は、正直な印象として、これらの分野の取り組みに何ら新しさを感じない。それどころか既視感や懐かしさがたっぷりある。恐らくは2000年頃から、IPv6やRF-IDの普及活動に従事していたからだろう。

 当時はe-Japanやe!プロジェクト調査研究などが華々しく立ち上がり、インターネットに接続された冷蔵庫や電子レンジの研究開発が進められていた。またクルマやヘルスケア分野についても同様である。