今年のバルセロナはどんな様子でしたか---。毎年この時期にはそんな話題が多い。もちろんサッカーではなく、モバイル分野で世界最大のイベント、Mobile World Congress(以下MWC)のことだ。定点観測を続けている人間として、今年は少し口が重くなってしまった。

 まずMWCの開催時期が、今年はついに3月になった。以前は2月半ばだったが、中国の旧正月の影響を避けるようになったためという節が有力だ。確かに現地では「さもありなん」と言いたくなるように、中国勢がMWCの「顔役」として君臨していた。

 その筆頭格である中国ファーウェイを含め、今年はスウェーデン・エリクソンやフィンランド・ノキアといった通信機器ベンダーが、とても元気だった。スモールセルのトレンドはハードウエアやその敷設の概念を変え、SDN/NFVなどのネットワーク変革も一層磨きがかかった。これらによって「インフラのソフトウエア化」というコンセプトがそろった今年は、3社とも、5G(第5世代移動通信システム)の本格化と通信事業のビジネスモデル変革を見据え、クラウド対応の強化やアップリンクへの着目など、それぞれが独自の取り組みを進めていた。

 一方、日本の通信機器メーカーは、率直に言って存在感が薄かった。筆者は日本で仕事をしているので、日本勢の動向は自然と視界に入る。ただこのような立場にいなければ、現地では見過ごしてしまうような状況だった。