年明け早々、日本のエンターテインメント界を騒がせてきた、アイドルグループSMAPの解散騒動が、一転して活動継続として落着した。

 いや、一件落着なのかは分からない。テレビで生中継されたメンバーの表情は一様にやつれて硬直しており、とてもアイドルとは思えなかった。そんな顛末にかかわらず、SMAPは芸能人として曲がり角を迎えたことは間違いなく、「解散しないだけ」でバラバラになる可能性もある。

 それと同時に今回の一連の騒動は、芸能界とほぼ一体となっているテレビ業界の産業構造の軋みを浮き彫りにした。今後、本件の取扱いによっては、テレビ業界の存在価値がいよいよ問われる事態もあるのではないか。

映像が捉えた雄弁な表情

 今回改めて感じたのが「映像の力」である。騒動を先導したのはスポーツ新聞だが、生中継されたSMAPメンバーのコメント全文が文字になった映像と見比べると、そのパワーの大きさは一目瞭然である。

 例えば草なぎ剛の「所属事務所へ詫びる機会を得た」というコメントの終了間際にカメラが捉えた、今回の騒動の調停役と目される木村拓哉の、明らかに不満そうに左の唇をかんでいる表情などだ。そんな生中継に視聴者からのツイートが殺到したのだろう。SMAPがテレビ番組に生出演した2016年1月18日の夜には、Twitterが一時つながりにくい状態に陥った。

 社会全体の関心事が生中継されることで、社会全体がその話題に同期する。その時、メッセージ性も社会的影響力も、極めて大きく増幅される。これは、ジョン・F・ケネディ元大統領の暗殺やアポロ11号の月面着陸から連綿と続く、映像による生中継の破壊力でもある。