一般的なITベンダーとは立ち位置が異なり、ユーザー企業の側に立って(場合によってはユーザー企業の名刺を持って)、システム企画や発注などの業務を支援する「ユーザー支援コンサルタント」(以下、コンサル)。古くからある業態だが、近年その役割が変わってきているという。

 従来は、システム企画書、見積もり、RFP(提案依頼書)の作成といった具合に、プロジェクト単位で、特別な専門性が必要な超上流工程の業務に限って、ユーザー企業が依頼することが多かった。ところが近年は、プロジェクト単位ではなく、期間を定めず長期間にわたり、専門性を必要としない雑多な業務も含めて依頼するケースが増えている。ユーザー企業側からすると、システム部門の一員として常駐してもらい何でもやってもらう、というわけだ。

 コンサルの料金は決して安くない。人や所属企業によって差が大きいが、外資系の大手コンサルティング会社のコンサルなら、日本の大手システムインテグレータのSEより、人月単価で100万円は高いというのが相場の目安だ。

非常に気が利くから何でもやってもらう

 そんな高額なコンサルに、雑多な業務も含めて依頼するのはなぜか。ある大手ユーザー企業のシステム部のマネジャーは、「非常に気が利くから」と答えた。コンサルの専門性を評価した言葉ではない。むしろ重宝しているのは、大きな声で挨拶をする、相手の話を真剣に聞く、リスクを察知して報告・連絡・相談を積極的に行う、経営層の目線に立った分かりやすい資料を作る、締め切りを守る、日頃の仕事で仮説・検証のサイクルを回す──といったビジネスパーソンとしての基本スキルやモラルといえる部分だ。

 これは、ユーザー企業のシステム部門にそうした人材が不足していることの裏返しである。出社時も退社時も挨拶は特にない、話を聞くときに相手の顔を見ない、言われないと報告・連絡・相談をしない、経営層の目線に立てない、締め切りを守らないことが常態化している、日頃の仕事で仮説・検証のサイクルを回していない──。こうして文字にすると、あまりに低レベルなように見えるかもしれない。しかし、「そんなメンバーはほとんどいない」と言い切れるシステム部門は多くはないだろう。

コンサルへの依存はどんどん深まる

 コンサルは専門性を発揮し、ユーザー企業に重要な価値を提供している。そこを問題視するつもりはない。気を付けるべきは、予算に余裕がある限りではあるが、ユーザー企業がコンサルへの依存をどんどん深めていきがちなことだ。

 システム部門では、気の利くコンサルに任せる仕事が増えるほど、業務がスムーズに回る。特に恩恵が大きいのは、システム部門のマネジャーだ。任せて安心なコンサルを雇えば、マネジャーとしての業務負荷が大きく減る。