2016年も数多くのIT活用事例がメディアをにぎわせた。「耳たこ大賞」があるなら、有力候補は自動車配車サービス「Uber(ウーバー)」だろう。

 自社雑誌の過去記事をキーワード検索できるシステムが社内にある。この1年を対象に、Uberとウーバーを検索してみたところ、合計で228件がヒットした。民泊仲介サービス「Airbnb(エアビーアンドビー)」は151件だった。

 両社はそれぞれ、タクシー業界とホテル業界のビジネスモデルを壊した「ディスラプター(破壊者)」と称される。ディスラプターに対し既存企業はどう戦うのか。議論の末に出てきたのは「自らをディスラプトせよ」という結論。これまでの自分の常識や成功体験に捉われず、新たなビジネスモデルを作りなさいというわけだ。

 さて、こうした既存企業の破壊的な試みを何と呼ぼう。「自己否定」は否定して終わりだし、「自己変革」ではありきたり。ふと浮かんだのが「変節」という言葉。手元の辞書を引くと「節義を変えること。また、従来の主張を変えること」とある。

 あまり前向きなシーンでは使われない変節。だが、自らの殻を破り、価値観を掛け返るほどの離れ業には似つかわしい。

 最近目の当たりにした日米IT企業の離れ業を紹介しよう。クラウドサービスの雄「AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)」と、ものづくりの巨人「日立製作所」だ。

建国から11年、AWS帝国がついに開国

 AWSがクラウドのリーダーであるのに異論はないだろう。2006年のサービス開始から11年を経て、売上高は1兆円規模に成長。これだけ大きくなっても、新サービスの開発意欲は衰えない。2016年11月28日から12月2日に開催した年次イベント「AWS re:Invent 2016」では、30近い新サービスや機能強化を発表。人工知能(AI)やデータ分析など、サービス開発に傾注する姿勢を改めて示した。