縮小が続いていたタブレット市場に反転の動きが見られる。

 米アップルのiPadが登場した2010年からの3~4年は盛り上がったタブレット市場だが、興味のあるユーザーに一通り行き渡るにつれ伸び悩みを見せ、2014からは3年連続で国内出荷台数が減少(ICT総研調べ)。だが、2017年に入ると風向きが変わり、例えば第3四半期(7~9月)の国内出荷台数は前年同期比18.8%増と増加に転じている(IDC Japan調べ)。

 このまま順調に回復するかは、来る2018年に登場するWindowsの新モデルが鍵を握りそうだ。

アップルのテコ入れで「下げ止まり」

 IDC Japanの調査によると、タブレットの出荷台数が増加に転じたのは2017年に入ってから。第1四半期(1~3月)は同3.0%増の222万台、第2四半期(4~6月)は同27.5%増の229万台、第3四半期は同18.8%増の212万台と拡大が続いている。

 同社は、この好調を支える主たる原因を「通信事業者向けが大きく市場をけん引した」と分析している。具体的には、回線契約付きモデルが第1四半期で同28.2%、第2四半期で同51.7%増、第3四半期で同41.9%増と急増。通信事業者がスマートフォン(スマホ)と抱き合わせでタブレットを積極販売したことが好調な数字となって表れたのが実態のようだ。

 一方、実需をより反映する指針と言えるWi-Fiモデルについて出荷台数の前年四半期比を見てみると、それぞれ16.2%減、1.9%増、0.1%減となっている。つまり第1四半期は相変わらず減少傾向が続いていたが、タブレットのテコ入れを図るアップルがiPad Proの10.5インチモデルを6月に発売したおかげで「ようやく下げ止まった」というのが実態とみられる。

表●IDC Japanの調査による国内タブレット市場動向
2016年第3四半期2016年第4四半期2017年第1四半期2017年第2四半期2017年第3四半期
出荷台数179万台(-14.6%)199万台(-10.1%)222万台(+3.0%)229万台(+27.5%)212万台(+18.8%)
(うち通信回線付きモデル)+28.2%+57.1%+41.9%
(うちWi-Fiモデル)-16.2%+1.9%-0.1%
家庭市場向け135万台(-15.2%)161万台(-7.6%)173万台(+9.7%)193万台(+36.3%)173万台(+28.3%)
ビジネス市場向け44万台(-12.9%)38万台(-19.3%)49万台(-15.2%)36万台(-5.2%)39万台(-10.9%)

スマホのチップでWindows

 このままiPadの力だけでタブレット市場を回復させられるかというと心許ない。IDC Japanのレポートでも、市場拡大のためには「タブレットを利用した新たなビジネスモデルの創出が必要」と分析する。そこで筆者が期待しているのが、2018年に新たに登場する「Always Connected PC」と呼ばれる米マイクロソフトWindowsを搭載した端末だ。

 新しいWindows搭載端末の構想は約1年前の2016年12月に中国の深セン市で開催されたイベント「WinHEC」で明らかになっており、2017年春の「COMPUTEX TAIPEI 2017」では台湾ASUSと米HPからの製品登場を予告していた。そして、2017年12月5日(現地時間)に米ハワイ州のマウイ島で開催された米クアルコム主催のイベントで正式に発表され、いよいよ2018年の春には登場する予定だ。

 この「Always Connected PC」はクアルコムの「Snapdragon」という英アーム社のアーキテクチャを使ったスマートフォン(スマホ)向けチップセットで動くWindows端末である。スマホのように基本的にLTEのモデムを標準搭載し、文字通り「いつでもインターネットにつながるパソコン」となるのが最大の特徴だ。これまでもLTEなどモバイル回線機能を備えたWindowsパソコンはあったが、あくまでごく一部のレアな存在だった。

 チップセットが変わって消費電力も少なくなり、フル充電で持ち出せばほぼ丸1日使える見込みだ。Always Connected PCは「PC」という名称こそ付いているものの、iPad Pro対抗のタブレットと言っていい製品だろう。