ベンチャーが会計や請求管理、情報共有、コミュニケーションなど様々なBtoB向けクラウドサービスを提供している。最近のITproのニュースでは、以下の記事に出てくるサービスが該当するだろう。

 多くの方、とりわけ大手企業の情報システム部門の方は、こうしたベンチャーのサービスは中小・零細企業、個人事業主向けで、自分たちとは無縁だと思っていないだろうか。もちろんサービスによって向き不向きはあるものの、一部の大手企業では、こうしたベンチャーのクラウドサービスを導入し、業務に活用し始めている。それも損害保険ジャパン日本興亜やドン・キホーテといった誰もが知る企業が採用し、効果を上げている。

 こうした大手企業の話を聞くと、そこにはベンチャーをパートナーとして捉え、自社の業務に素早く適用させていき、短期間で業務を改善していく様子がうかがえる。こうしたやり方は、これまでの自社開発や開発委託とは異なる、新たな“システム開発”の手法のようにも感じられる。実際の両社の導入事例を見てみよう。

数千人がベンチャーのサービス使う損害保険ジャパン日本興亜

 「我々の方からシステム部に『こういった製品を導入してもよいか』ということを依頼した。システム部などから『こういう基準に沿っていれば会社として利用を認める』といった条件をクリアして導入に至った」

 損害保険ジャパン日本興亜の事務企画部長である藤野修氏は、ベンチャー企業であるスタディストのマニュアル作成・閲覧サービス「TeachmeBiz」導入についてこのように語る。事業企画部は営業店や部店、地区本部の事務処理支援などを担う部署であり、情報システム部門から見るとユーザー部門に該当する。

 損害保険ジャパン日本興亜は2014年9月1日、旧損害保険ジャパンと旧日本興亜損害保険の合併により誕生した。単体の保険料収入で国内最大の損害保険会社である。そんな同社がベンチャーのサービス導入に至った背景には、OJT教育支援の必要性が高まったことが挙げられる。

 一つはアソシエイトと呼ばれるパートタイムの従業者の業務領域拡大に伴う支援が必要になったこと。もう一つは合併に伴い旧日本興亜損害保険の社員に対して新会社の事務処理習熟支援をする必要があったためだ。新会社の業務は原則合併前の旧損害保険ジャパンの業務がベースとなる。そのための効果的なマニュアルを早急に必要としていたのだ。対象ユーザーはアソシエイトだけでも約3000人に上る。