DeNAの医療情報メディア「WELQ」が不正確な記事を量産していたことに端を発するキュレーションメディアの騒動は、今も収まる気配がない(関連記事:DeNAが「WELQ騒動」で会見、「成長優先、認識が甘かった」、守安社長らが謝罪)。

 未経験のライターを低賃金で募り、ネット上の医療サイトから記述をつまみ食いした不正確な記事を量産し、PV(ページビュー)を稼ぐ。このDeNAの事業モデルに、擁護の余地は全く無い。薬機法(旧薬事法)上の問題が明らかだった点で、WELQの非公開化は遅きに失したし、その後の記者会見での説明にも納得いかない点が多々あった。

 ただ、DeNA守安功社長兼CEO(最高経営責任者)の事後対応として、筆者が一点、高く評価していることがある。医療情報サイトのWELQだけでなく、明確な法律違反があったとは言えない他の自社運営キュレーションメディアについても、「モラルに反する」との判断で記事を全て非公開化したことだ。守安氏がその行為がもたらす意味を認識していたか、は別の話だが。

*DeNAは2016年11月29日にWELQを非公開化したのち、同年12月1日にWELQと同じ運営方針を採る8つのキュレーションメディアを、同月7日には運営方針が異なるキュレーションメディア「MERY」を非公開化した。

 守安氏はDeNAのプレスリリース中で、記事を非公開化の理由として「(記事執筆の)マニュアルやライターの方々への指示などにおいて、他サイトからの文言の転用を推奨していると捉えられかねない点」があり、「モラルに反していないという考えを持つことができませんでした」と説明している。

 企業の不祥事が発覚した場合、マスコミは法律違反の有無にばかり焦点を当てがちだ。個人ブログなどのネット言説でも、DeNAの一件については「モラル違反ではない、法律違反だ」「これは組織的犯罪だ」といった主張がある。

 だが、ひねくれ者の筆者としては、そこに「モラル違反より、法令違反の方が重い」とする偏向を感じてしまう。そもそも、ある事業が「モラル違反」と評価されることは、法律違反より格段に重い意味があるのではないのか。

 法令違反を問われたなら、企業はその行為を是正することで、事業を存続できる。だが、事業の構造にモラル違反があるとすれば、その事業が社会に存在する意義そのものが問われ、事業の存続は危うくなる。モラル違反という言葉が弱いとすれば、「Don't Be Evil」との行動規範を掲げる米グーグルにならい、「邪悪(Evil)な事業」という言葉に置き換えてもいい。