以前聞いた話だが、30代のあるSEが4歳の娘から「パパはどんな仕事をしているの?」と尋ねられ、とても困ったそうだ。ITやエンジニアという言葉を使っても、おそらく理解してもらえないはず。自分の仕事を分かりやすくかみ砕いて説明するにはどうしたらよいか。悩んだ挙げ句、彼はこんな説明をしたそうだ。

 「システム関係の技術者だよ」

 ところがそれを聞いた子供は「よく分からない…」と言いながら、少しがっかりした表情を浮かべてしまった。彼は何だか申し訳なくなり、悲しい気分になったという。

子供にはピンと来ない?

 皆さんならSEの仕事をどうやって分かりやすく説明するだろうか。幼い子供でなくても構わない。世代間ギャップのある高齢者でも同様だ。ちなみに筆者の弟は某メーカーでSEを務めているが、80代の祖母はSEという仕事を理解できず、社名から「結局、工員さんね」と答えた。これが現実なのだろう。

 なぜこんな話を取り上げるのか、と思う読者がいるかもしれない。その理由は単純だ。仕事の内容を分かりやすく簡潔に説明できることは、すなわちその仕事の果たすべき本質的な役割が明確になっていることだと思うからだ。

 もっとも、SEという仕事は子供や高齢者に説明しにくい職種の代表かもしれない。その理由は大きく2つある。1つはSEという仕事の歴史が浅いこと。医者や大工のような古くからある職業に比べると、どうしても認知度が低いし、端的に説明するのが難しい面がある。

 もう1つの理由は、情報システムやソフトウエアが物理的に目に見えないことが多い点だ。パソコンやスマホの画面の向こう側にあるソフトウエアを開発したといっても、子供や高齢者には意味が分からない。企業内で使う業務システムや、クラウドやミドルウエアといったITインフラを担うSEの場合、目にする機会さえないので、なおさら説明しにくい。

 ただし、ソフトウエアの世界でもゲームソフトのエンジニアなら話は別だ。「ゲームソフトを作る仕事」となれば、それを理解し、さらに目を輝かせる子供多いだろう。これはゲームソフトが広く身近な存在だからかもしれない。

 社会やビジネスを支える情報システムであるなら、その価値をもっと多くの人に理解してもらう必要があるのではないだろうか。