間に米大統領選でのトランプ候補当選という世界的なサプライズを挟んで与野党の論戦がかまびすしかった第192回国会(臨時会)が2016年12月17日に閉会した。環太平洋経済連携協定(TPP)の承認や、延長された会期末に突然審議が再開されたカジノを含む統合型リゾート(IR)法(特定複合観光施設区域の整備推進法)などの陰でほとんど注目されなかったが、同国会ではIT分野に大きな影響を及ぼす法律が3つも成立した。

 まず、11月8日には消費増税の再延期法が成立。2019年10月に消費税率を現行の8%から10%へ引き上げると同時に、飲食料品などの税率を8%に据え置く軽減税率制度を初めて導入することが決まった。

 税率が複数になることで、食品小売業や飲食業のPOS(販売時点情報管理)レジスタや商品マスターデータベースの改修が必要になるほか、卸売業や生産者を含む受発注業務、経理、税務申告など、ほとんどの企業の広範なシステムに影響が及ぶ(関連記事:「軽減税率は2019年10月導入が確定、企業が留意すべきポイントは?」)。

店頭でもカード決済はIC対応へ

 延長会期に入った12月2日には改正割賦販売法が成立し、12月6日の閣議決定で公布された。施行は1年6カ月以内である。主眼は、クレジットカードを安心・安全に使える環境の整備。2020年東京五輪に向けたインバウンド需要の取り込みもにらんでいる。

 カード番号漏えいや不正使用の増加に対応するため、加盟店に対し決済端末のICカード対応などの対策を義務付ける。食品小売業や飲食業の店頭レジでは、軽減税率対応と並んで、カード決済のIC対応も求められるわけだ。また、カード決済代行業に新しく登録制を導入し、新規参入が相次ぐFinTech企業などの法的な位置づけを明確にする。

 3つめが官民データ活用推進基本法である。12月7日に参議院で可決・成立し、12月9日の閣議決定を受けて公布、即日施行された。

 先の2つの法律に比べると、同法は「基本法」であるため関連する法律や政省令がそろってこないと全体像や実務面のインパクトはわかりにくい。だが、国・自治体・企業が保有するデータの活用を促進する観点から、ビジネスのデジタル化(デジタル・トランスフォーメーション)などの企業の今後の新事業や、国・自治体の電子行政の進展を、大きく左右することになりそうだ。

 官民データ活用推進基本法は、どのような意義があり、どんな影響を及ぼすのだろうか。