総務省が2016年10~11月に開催した「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」。携帯電話市場の競争促進に向けた議論が繰り広げられ、11月10日に結果(とりまとめ)を公表した。総務省はこれを受け、関連するガイドラインや省令の改正案を11月18日に発表し、12月19日まで意見募集中である。

 あまり注目されていないが、今回の結末は「格安スマホ」を提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)にとって、相当に大きな前進である。ただ、一般消費者が直ちに恩恵を受けるかと言えば、必ずしもそうではない。むしろ、スマートフォン購入の実質負担が高まる可能性が高く、反発も大きそうだ。以下では、こうしたギャップの背景と今後の展開を考察したい。

2017年5月以降は解約時に原則SIMロック解除

 今回のフォローアップ会合で議論した主なテーマは、(1)SIMロック解除、(2)端末販売の適正化、(3)接続料の低廉化の3つ。MVNOにとって「相当に大きな前進」と考える理由は以下の通りである。

 まず(1)SIMロック解除は、MVNO向けのSIMロックを廃止としたことが大きい。NTTドコモの回線を活用したMVNOサービスでは既存のNTTドコモ端末をそのまま流用できるが、KDDI(au)やソフトバンクの回線を活用したMVNOサービスでは一部を除き、SIMロックを解除しなければ既存端末を流用できない。端末側の対応が必要なので適用時期は2017年8月以降となっているが、KDDIやソフトバンクのユーザーはMVNOに乗り換えやすくなる。

図1●SIMロック解除と端末販売の適正化に関する今回の主な施策(出所:総務省)
図1●SIMロック解除と端末販売の適正化に関する今回の主な施策(出所:総務省)
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 さらに2017年5月以降は解約時に原則SIMロック解除とした(2015年5月以降に発売された端末が対象)。今後はHLR/HSS接続で加入者管理機能を保有する「フルMVNO」が登場する。フルMVNOが発行した独自のSIMカードは回線の調達先と別の携帯電話事業者として認識されるため、SIMロック解除した端末でなければ利用できないという懸念があった。解約時に原則SIMロック解除となれば、フルMVNOへの移行障壁を下げられる。