インターネットの世界で「東西問題」が深刻化しているのをご存じだろうか。ネットワークの世界では、基幹から末端へと流れる通信を「North-South Traffic」、末端間の通信を「East-West Traffic」と呼ぶ。インターネットの東西問題とは、クラウドやWebサービスの台頭によってインターネットの「East-West」のトラフィックが急増することで、データセンター事業者が回線コストの上昇などに頭を悩ませていることを言う。

 通信の流れを「North-South」や「East-West」と呼ぶのは、ネットワーク構成図の上下を北と南、左右を西と東に見立てているからだ。ネットワーク構成図を書く際には一般に、外部のネットワークと接続する基幹のルーターを図の上部に配置し、より小型のスイッチやサーバーなどはその下にツリー状に配置していく。ルーターからスイッチ、サーバーへと至る通信が「North-South」であり、サーバー間の通信は「East-West」となる。

 インターネットにも東西南北がある。インターネットは「AS(自律システム)」というネットワークがメッシュ状に接続することで成り立っているが、いくつかの階層があるのだ。最上位には「Tier1」と呼ばれる大手インターネット接続事業者(ISP)がいて、その下に一般のISPや企業・団体がつながり、一番下にエンドユーザーが存在する。インターネット上のコンテンツが様々なISPを経てエンドユーザーに届く通信が、インターネットの「North-South」の通信となる。

悩むデータセンター事業者

 一方、AS間で行われる通信、より具体的に言えばインターネットに接続するデータセンター(DC)間の通信が「East-West」の通信となる。近年、「Webサービス」などに代表される分散アプリケーションの台頭や、クラウドコンピューティングの普及によって、この「East-West」のトラフィックが急増しており、多くのDC事業者が回線コストの上昇などに頭を悩ませているのだという。