IoT(インターネット・オブ・シングズ)を巡る無線通信技術が、がぜん面白くなってきた。デバイス配置の自由度などを考えると、有線接続は限界がある。当然、無線技術を選ぶわけだが、その選択肢が大幅に広がろうとしているのだ。

 IoT機器の通信方法は大きく二つに分けられる。一つは機器から直接インターネットに接続する方式。もう一つは「ゲートウエイ」と呼ばれる機器を介して接続する方式である。前者の代表は、3G/LTEモデムを介して直接ネットワークに接続できる機器。無線LANのアクセスポイント(AP)をゲートウエイと解釈するかどうかは微妙だが、IPネットワークに直接接続しているという点では、無線LANもこのカテゴリーに入れていいだろう。後者の代表は、Bluetooth Low Energy(BLE)やZigBeeといった、直接IPで通信しない無線通信規格である。

 基本的に前者は、高性能だが消費電力が比較的高い。電池駆動を想定したIoT機器の場合、電力の消費はクリティカルな課題だ。また無線LANの場合は、電波が飛ぶ範囲が狭いため、APを近くに設置する手間がかかる。3G/LTEで通信するとなると、いかにIoT向けのプランがあるとはいえ、それなりの通信コストがかかる。例えばソラコムのプランだと、SIM1枚で1日10円の基本料金がかかる。つまり最低でも月額300円はかかる。これでも3大キャリアが提供する携帯電話網に接続するサービスに比べかなり安価だが、大量のセンサーノードをばらまく用途には使いづらい。

 どのみちAPのようなゲートウエイ的なものを置くのであれば、末端までIPで直接つながなくてもいい、というのがBLEやZigBeeを使ったアプローチだと言えるだろう。これらは6LoWPANに対応しているので、ゲートウエイさえあればIPv6で直接つなげる、という解もある。現状では価格や使いやすさ、特にスマートフォンを利用したアプリとの連動などから、BLEが大きく先行している印象だ。

 ただセンサーネットワーク的な用途、特に広範囲に大量のセンサーをばらまいて、そのデータを収集する用途には使いづらい。BLEの通信距離は数十mと短く、場合によっては多数のゲートウエイ機器を配置しなければならない。最新のBluetooth 5.0規格ではメッシュ構成を取れるようになるため、こうした問題の解決につながるかもしれない。だが、それでは現在先行しているというメリットが失われてしまう。