2016年も残すところ1カ月になった。少し早いが2016年を振り返ると、企業向けIT業界ではIoT(Internet of Things)やAI(人工知能)がひたすら注目を浴びた1年だったように思う。

 今年1年ホットだったのは、AIやIoTのような新しいキーワードだけではない。情報システムの構築には欠かせない「データベース(DB)」も、新たな動きがあり、2016年の要注目の分野だった、と記者は考える。ここで指すDBはNoSQLなど新しい技術を採用した製品ではない。RDB(リレーショナルデータベース)を中心とした、企業向けシステムに一般的に利用するDBMS(データベース管理ソフト)だ。

 企業向けシステムのDBといえば、米Oracleの「Oracle Database」や米Microsoftの「SQL Server」が企業向けシステムでは代表的な製品だ。最近ではOSS(オープンソースソフトウエア)の「PostgreSQL」や「MySQL」の採用も増えている。とはいえ、新製品や大きな技術革新も少ない、いわゆる枯れた分野だ。

 そんなDBに今年、注目すべき動きが二つあった。一つは2016年1月に、Oracle Databaseのライセンス体系が変わったこと。そしてもう一つは、新製品やサービスの登場により、DB分野でもクラウドシフトが急速に進んでいることだ。この二つの動きは、多くの企業にとって「どのDBを、どのような環境で利用するか」という再考を迫ることになるとみている。

ライセンス体系の変更がDB再考のきっかけに

 一つめの「Oracle Databaseのライセンス体系の変更」の内容を簡単にまとめると以下のようになる。企業システム向けの低価格ライセンスであった「Standard Edition One(SE1)」がなくなり、上位版である「Standard Edition(SE)」に一本化した。そのうえで「SE」が新たに「Standard Edition 2(SE2)」というラインセンスに変更された。SEとSE2は同じ210万円(税別)だ。しかし、最大CPUソケット数がSEでは4ソケットだったが、SE2では2ソケットとなる。(関連記事: 日本オラクルがDBライセンスを変更、費用増迫られる中小規模システムも )。

 特に「仮想化環境でOracle Databaseを利用している場合は影響を受ける」とアシストのデータベース技術本部ビジネス推進部の岸和田隆部長は指摘する。SEからSE2に移行する場合は価格の変更はないものの、大きな影響を受けるのはソケット数の変更だ。仮想化環境で利用する場合、Oracle Databaseは仮想マシン単位ではなく、物理的なCPUに課金する体系を採っている。このため、SEで仮想化を利用している企業はSE2になった場合に影響が出る可能性がある。