2015年は「モダナイゼーション元年」になる――。記者は、日経SYSTEMSの特集を取材していて、こう強く感じた。

 モダナイゼーションとは、老朽化した情報システムを近代化する開発手法だ。2008年頃からIT業界で使われ始め、ここにきてその適用が急速に広がっている。これに合わせる形で、大手ベンダーを中心に、モダナイゼーションの専門部隊を設置する動きも目立ってきた。

「新規開発」に代わる選択肢に

 モダナイゼーションの魅力は、開発における無駄の排除にある。現行機能を踏襲し、古びたシステムの一部を最適化する手法だ。手間やコストを抑えられるほか、「できるだけ長く利用したい」というニーズにマッチする。

 なぜ無駄を排除できるのか。それは、モダナイゼーションでは原則、要件定義を実施しないためだ。プロジェクトの失敗原因の多くは、要件定義ミスにある。モダナイゼーションでは現行機能を踏襲するだけに、要求リスクや政治リスクを軽減できる。これは、IT部門にとっても、ベンダーにとっても大きなメリットだ。

 モダナイゼーションのこうした特徴やメリットにいち早く着目し、適用し始める企業も増えてきた。

写真●モダナイゼーションを適用したワコールの開発チーム(上段  中央が大西氏)
写真●モダナイゼーションを適用したワコールの開発チーム(上段 中央が大西氏)
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 例えば、全50システムをプライベートクラウド上に統合しているワコールでは、約9割のシステムでモダナイゼーションを適用した(写真)。プロジェクトを指揮する大西輝昌氏(情報システム部 グループ情報システム課 課長)は「旧システムの機能やデータをそのまま新システムに移行した。要件定義を実施しないことで、開発期間は4分の1、コストは5分の1に抑えられた」と説明する。

 2014年10月、学内の基幹システムをMicrosoft AzureやSaaS上に統合した東京工科大学。プロジェクトを統括した田胡和哉氏(メディアセンター長 兼 コンピュータサイエンス学部教授)も、モダナイゼーションを適用した一人だ。田胡氏は「機能要件を決めるところから始めると、コストと時間が掛かる。既存システムの機能をそのままSaaSに移行した」と話す。