本当にニーズはあるのか、受講者がいなかったらどうしよう――。今年も、何度もこんな不安に駆られた。筆者は、記事の企画執筆と並行して「日経ITエンジニアスクール」の講座企画に携わっている。新企画の講座開催時は、いつも落ち着かない。

 日経ITエンジニアスクールは、IT業界のプロフェッショナルに講師をお願いし、Webや雑誌の記事では伝えきれないノウハウを対面で講義する場だ。2017年も数多くの新講座を企画してきたが、筆者が特に不安だったのが、『作って分かる「IoT」実践講座』だった。

『作って分かる「IoT」実践講座』の様子。サーバーワークス クラウドインテグレーション部 IoT担当の中村悟大氏が、IoTシステムの作り方の基本を指南する
『作って分かる「IoT」実践講座』の様子。サーバーワークス クラウドインテグレーション部 IoT担当の中村悟大氏が、IoTシステムの作り方の基本を指南する
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 雑誌『日経Linux』での人気連載を基にしたもので、ボードコンピュータ「Raspberry Pi」や温度センサー、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)を使って簡単なIoT(インターネット・オブ・シングズ)システムを自作するハンズオン形式の講座だ。電子工作を趣味にしている人だけでなく、業務でIoTに関わるエンジニアにも役に立つ内容ではないか。そう考えて企画したものの、本当に興味を持ってもらえるのか確信が持てないまま受講者の募集を始めた。

 ふたを開けてみれば、予想外のスピードで席が埋まった。さらに驚いたのが、受講者層の多様さである。企画時に想定していた主な受講者はITエンジニアだったが、経営企画やマーケティング、製造、事務など、様々な職種の方が集まった。経営層の方の参加もあった。

受講者には「Raspberry Pi」や温度センサーなどを配布。自ら配線にチャレンジしたあと、温度データをAWSに送る
受講者には「Raspberry Pi」や温度センサーなどを配布。自ら配線にチャレンジしたあと、温度データをAWSに送る
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 その後、同講座は合計4回開催したが、エンジニア以外の方の姿はどの回にも見られた。IoTを使ったシステムを「企画する」「使う」立場の人が、それを「作る」ことに強い関心を示しているわけだ。

分厚い企画書よりも、動くモノを

 それはなぜなのか。先日、企業の新規事業創出支援を手掛けるコンサルタントとの打ち合わせの最中、ハッとした。

 デジタル技術を活用して新ビジネスを生み出す際、情報システム部門がどんな役割を担うべきかを話していたときだ。富士通総研の黒木昭博チーフシニアコンサルタントから「情シス部門の人が持っている“作れる力”って、実はものすごいアドバンテージなんですよ」という言葉を聞いた。