IT部門の存在感が薄れている――。そんな声を取材で耳にする機会が増えている。先日も、大手ユーザー企業のシステム構築を支援するITコンサルタントからこんな話を聞いた。「今、IT部門はサンドバッグ状態です。最近支援に入ったユーザー企業でも、IT部門は社内の利用部門からもITベンダーからも叩かれてしまっています」。

 なぜサンドバッグ状態になっているのか。前出のITコンサルタントは、「IT部門が何のプロなのか」が問われていると指摘する。IT部門は一般に、社内の利用部門からは「技術のプロ」を、ITベンダーからは「業務のプロ」を期待されやすい。ところが最近は、どちらの面でも難しくなっている。

 まず、技術の側面についていえば、ユーザー企業のIT部門はITベンダーに比べるとどうしても後れを取りやすい。しかも最近は、経営支援やマーケティングなどを開発対象にしたシステムが増えてきた影響もあって、利用部門のほうが最新技術に明るいケースさえ珍しくない。利用部門から「うちのビジネスにはいつ機械学習を取り入れるの?」などと聞かれ、答えに窮するIT部門が少なくない。ますますITベンダーに頼る構図が強化されやすい。

 では、業務はどうか。こちらも十分に応えきれないケースが目に付く。経営支援やマーケティング向けのシステムは、既存の基幹系システムに比べると要件が固まりにくく、ビジネスの状況変化に応じて柔軟に調整する必要がある。もっとも、利用部門のビジネスをしっかり理解していないと、その調整が難しい。ビジネスを理解している自信がないIT部門の場合、利用部門の言いなりに陥りやすい。いつまで立っても仕様が固まらず、ITベンダーが困惑する。

 技術ではITベンダーに遅れ、業務理解では利用部門にかなわない。そんな状況だとすると、IT部門は何のプロなのか。筆者は「システム構築・運用プロジェクトを主導的に進めるプロ」だと考える。前述のように要件が固まりにくい案件が増えている以上、ITベンダーと請負契約を結んで“お任せ”状態にしていては真っ当なシステムは作れないし、運用もできない。プロジェクト期間中に積極的に関与し、プロダクトに責任を持つ。そのプロであることが求められていると思う。

 システム構築・運用プロジェクトを主導的に進めるプロとは、単にプロジェクトのスケジュールや予算をしっかり管理するという意味にとどまらない。プロジェクトを適切に進行させる上では、最近のIT業界で顕著になってきた人不足への対策や、最新技術・サービスをできるだけ早く自社に取り込む仕組みにも目を配りたい。これらの課題を意識し、組織体制からしっかり整える必要がある。

ユーザーがスクラムマスターを務めて開発を主導

写真●パーク24の木都老 宏亮氏(業務推進本部 技術開発部 事業システムグループ 課長代理)
写真●パーク24の木都老 宏亮氏(業務推進本部 技術開発部 事業システムグループ 課長代理)
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 実際にこのような課題意識のもと、組織体制から工夫してシステム構築・運用に携わるプロのIT部門がある。一例は、貸し駐車場サービス大手のパーク24のIT部門である。駐車場サービスやカーシェアリング事業といったWeb系のシステムを担当する木都老 宏亮(きどころ こうすけ)氏(業務推進本部 技術開発部 事業システムグループ 課長代理)らのチームを見てみよう。