「米国企業では、データ分析の対象領域が拡大し、データ分析関連の技術も広まりそうだ」。2015年10月18日から22日にかけ、米国カリフォルニア州のアナハイムで開かれたデータ分析関連イベント「TERADATA 2015 PARTNERS」を取材して、こう肌で感じることができた(写真1)。
データウエアハウスをはじめとする米テラデータのデータ分析関連製品のユーザー企業グループが運営するこのイベントに、50カ国から5000人が参加した。今年で30回目を迎えたこのイベントの講演数は200件を超えた。そのうち6割がユーザー企業の事例紹介だった。
大手ユーザー企業の事例講演で印象に残ったのは、「全員分析経営」を目指した社内普及に取り組んでいたことだった。その詳細は、2015年11月29日発行の日経情報ストラテジー2016年1月号で紹介している。
「全チャネルで顧客を分析したがっている」
ここでは冒頭の感想について深掘りしていく。データ分析の対象領域の拡大を実感したのは、テラデータのマイク・コーラーCEO(最高経営責任者)への取材で、「米国を中心とするユーザー企業の経営層から出てきている分析ニーズは何か」を尋ねたときだ。その回答は「様々なニーズが出てきてはいるが、小売業や銀行、航空といったBtoC(消費者向け)の事業を手掛ける企業で多いのは、すべてのチャネルについて分析して顧客をつかみたいというもの。小売業で言えば、どのチャネルで何を買っているのかだけでなく、その顧客の嗜好までも理解したいと考えている」だった(写真2)。
つまり「米国のBtoC企業は、ネットや店舗など様々な顧客の接点を持つオムニチャネル戦略がかなり進んでいて、現在は、各接点から集まるデータを分析して成果を出すことに注目が集まっている」といえる。
講演でも、全員分析経営を目指す企業がある一方、新たなデータ分析基盤を整備して顧客の心をつかむことを目指すユーザー企業の講演も少なくなかった。
その1社が、米国内に主たる路線を持つ航空会社としては最大のサウスウエスト航空だ。社員それぞれが趣向を凝らしたおもてなしを行うことで有名な同社の講演に参加したところ、「顧客中心主義」の実現を目指して、テラデータのデータウエアハウスを中心とした新しい分析システムを整備していた。
このシステムで顧客の行動などを分析した結果を、サービスを経験することで顧客が得る価値である「カスタマー・エスクペリエンス」の向上策につなげ、売り上げ向上を目指していくという。社員の頑張りに加えて、全社的な顧客分析も行っていくことで、よりよいサービス向上を図っていこうとしているわけだ。