「過去に大規模なトラブルを2回やっている。次期システムは、安全確実が基本方針」「システム障害は二度と起こせない立場」「もしも三度目があれば、我々は立っていられなくなる」――。2016年11月14日、日本銀行内にある金融記者クラブで決算会見に臨んだみずほフィナンシャルグループ(FG)の佐藤康博社長が、同社の置かれている立場を繰り返し強調する様子が印象に残っている。

 みずほ銀行は過去に2度の大規模システム障害を引き起こしている。1度目は2002年4月。旧第一勧業銀行、旧富士銀行、旧日本興業銀行が合併してスタートしたみずほフィナンシャルグループは営業初日から、口座振替の遅延やATM(現金預け払い機)のトラブルが発生し、混乱は2週間以上にわたった。

 2度目は2011年3月のこと。東日本大震災の義援金の振り込みが集中したことが引き金となり、振込処理の遅れやATMの取引停止が連発。トラブルの復旧までに1週間以上を要した。

 こうした過去に、佐藤社長が何度も言及した理由は一つ。ピーク時8000人、3000億円強を投じて進めている勘定系システムの統合、刷新プロジェクトを巡り、2016年12月に迫っていた次期システムの開発完了を、数カ月間延期するからだ。同プロジェクトでのスケジュール変更は、これが二度目となる。

 絶対にシステム障害を起こせない。そのためには慎重に慎重を期する必要があり、スケジュールの延期もやむを得ないというわけだ。

 筆者はもやもやを感じている。安全第一という錦の御旗で、みずほ銀行はシステム統合スケジュールに関する対外的な“約束”を、徐々に覆い隠そうとしているようにみえるからだ。

写真●みずほ銀行の店舗
写真●みずほ銀行の店舗
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