「プロプライエタリなソフトウエアの開発企業」。これが、かつての米Microsoftの典型的なイメージでした。オープンソースやLinuxを敵視し、パッケージソフトウエアのライセンスビジネスに邁進していたのです。

 私は、そんなMicrosoftの姿勢の“原点”を、休刊したパソコン雑誌「日経バイト」に書いたことがあります。同誌2003年11月号の特集「オープンソースの魔力」から、その箇所を引用しましょう。

 ソフトウェアの共有は別に新しい概念ではない。ソフトウェアの黎明期からあったものだ。むしろ,「コピーは善」とする共有文化の考え方に対し,ソフトウェアをビジネス化する目的で「コピーは悪」とする考え方が後から台頭してきたのである。これを象徴するのが,米Microsoft社(当時は米Micro-Soft社)を設立したBill Gates氏が1976年に書いたユーザーへの抗議文「An Open Letter to Hobbyists」である。この中で同氏は,Microsoftが開発したAltair BASICの“ユーザー”のほとんどはコピーした製品を使っており,実際に購入したユーザーは10%にも満たないと指摘。「ソフトウェアを盗んでいる」と激しく非難した。

 コンピュータの黎明期にあった素朴なソフトウエア共有文化は、ソフトウエアで収益を上げようとするMicrosoftにとっては障害以外の何者でもありませんでした。ですから、共有文化の申し子であるオープンソースもLinuxも、Microsoftにとっては“敵”だったのです。

 ところが、そうしたMicrosoftの姿勢がここに来て激変しています。かつての姿勢が信じられないくらい、オープンな戦略を次々に打ち出しているのです。2014年2月にSatya Nadella氏が同社のCEO(最高経営責任者)に就任したのが大きく影響しているのでしょう。以前からの取り組みが今、花開いているという面はあると思いますが、「CEOが交代するとこんなに企業は変わるものなのか」というのが正直な感想です。

Android/iOSアプリを開発できる

 Microsoftがいかにオープンな企業になったのか。同社が2015年7月に公開した統合開発環境「Visual Studio 2015」を例に説明しましょう。