「あの人、メンバーのときは優秀だったけど、マネジャーとしてはダメだよね---」

 一度はこんな会話をしたり聞いたりしたことがあるだろう。メンバーとして優秀な働きぶりが認められるとマネジャー職に出世するもの。だが、人によってはマネジャー職になると、とたんにダメになる人がいる。

 メンバーがどんなに頑張って仕事をしてもほめようともせずあら探しをしたり、メンバーに仕事を割り当てたにもかかわらず途中で「任せられない」と自分でやってしまったりと、「こんなマネジャーの下で働きたくない」と言われても仕方のないことをしてしまうのだ。同様のシーンは日本中の会社で起きているのではないだろうか。

 偉そうなことを書いているが、筆者自身、初めてマネジャー職に就いたときは同じようなことをしていたように思う。少し前まで自分がやっていたことを部下がやっているので、どうしても「自分なら」という目線で見てしまっていた。我ながら情けない。

 「なぜこんなことが頻発するのだろうか?」「どうしたらいいのだろうか?」と、筆者自身もんもんとして答えを見つけられずにいたが、最近編集に携わった書籍(『誰も教えてくれない 考えるスキル』芝本秀徳 著、日経BP社 発行)の中で丁寧に説明されていた。

 その本によると、「役職が上がると求められるスキルが異なり、これまでとは違ったスキルを身に付けなければならないが、そのことに気付いていない、もしくは気付いても新たなスキルの習得がうまくいっていないからだ」という。

 本ではマネジャーに求められるスキルを「カッツモデル」で説明している。そのモデルによるとマネジャーは「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチャルスキル」の3つが必要で、特に最近重要なのが「コンセプチャルスキル」なんだとか。本の筆者である芝本氏は、「以前は部長職以上でコンセプチャルスキルが重要であったが、最近では係長や課長といった早い段階で求められるようになってきた」と指摘する。