「コンピュータ技術者が最も力を発揮できるのは30代」という俗説を聞いたのは記者になった直後であったから30年近く前になる。今や「プログラマ35歳定年説」あるいは「SE 35歳定年説」が話題になることは少ないと思うがどうだろうか。

 30年近く前、もう一つの「30代ピーク説」を知った。新聞社から出向していた先輩から「記者のピークは30代前半、そのときにいい仕事ができるように20代を過ごせ」と教えられた。自身の30代を思い出して書いたコラムを別途「CAMPANELLA」という特設サイトに本日公開した(『【ITと酒】飲み屋で「会えない会社の人」となぞなぞ遊び 記者のピークはなぜ30代前半なのか』)。

 先輩の教えから分かるように「30代ピーク説」は「20代訓練説」と一体である。先日、ITpro編集長から「20代ネタにご執心ですね」と言われ、控えようと思っていたが戻ってしまった。編集長の指摘は、20代の経験で人の頭が作られるという話を3回も書いたことについてであった(『「20代で頭を鍛え損なった人がすべきこと」に取り組む50代のある半日』、『馬車馬のように働くか、それとも「コンピュータを呑む」か』、『「仕事ができる人の頭は20代に作られる」説を巡る意見交換』)。

 ITpro編集長には「20代について書いたように見えるが実際は50代の話。自分の今後について考え込んでいるので」と応じた。「30代ピーク説」は筆者にとっては正しい、だが20年もたって確認しているだけでは展望が開けない。

「ピークを過ぎた社員への給料を引き下げたい」

 「20代ネタ」風のコラムをあれこれ書くことと並行して、筆者は『お金はサルを進化させたか 良き人生のための日常経済学』(野口真人著)というファイナンス関連の書籍を編集していた。この本の中に以下の記述がある。

 ものや事業の価値はキャッシュフローによって決まるという考え方を人に当てはめてみよう。社員に払う給与はその社員が生み出すキャッシュフローの大きさに応じて決められることになる。(中略)一般的な会社員の稼ぐ力は、新人のころはゼロだがキャリアを積むにつれて大きくなり、体力、気力が充実し、経験も積んだ中堅の40歳代でピークになり、その後は緩やかに低下していくはずだ。そうすると(中略)ピークを過ぎた社員への給料を引き下げたいと企業が考えてもおかしくはない。

 これを読み、編集の手を止めざるを得なかった。上記の文の後に著者の野口氏は「生涯年収が変わらないとして(中略)年功給と、どの時点でも稼ぐ力と給与を一致させる、いわゆる成果報酬制度と、どちらが社員にとって得だろうか」と書いていたからである。