「なんであんなに融通が利かないんだ。部門内でちょっとした情報共有がしたいだけなのに、何かと言えばセキュリティや内部統制を持ち出して話がちっとも前に進まない」

 「新しいシステムが本当に使いづらい。以前のシステムを問題なく使えていたのに、なぜわざわざ改悪するのか」

 「専門用語ばっかり使って何を言いたいのかさっぱり分からない。もっと現場の立場になってもらわないと」

 記者は情報システム開発の現場を取材する機会が多いこともあって、情報システム部門に対する利用部門の不満の声をよく耳にする。

 でも情報システム部門からすれば、果たすべき役割を果たしているだけ、という思いがある。よく言われるように、情報システム部門は損な役回りの部署といえるだろう。

現場とのコミュニケーション不全という病

 情報システム部門が利用部門から「嫌われる」とすれば、その理由の1つはコミュニケーション不足にあるのではないだろうか。お互いの考えていることが分からなければ、溝は深くなりがちだ。

 「現場との密で円滑なコミュニケーション」はCIO(最高情報責任者)や情報システム担当者にとって古くて新しい課題。企業によっては、情報システム部門の担当者を数カ月単位で利用部門の現場に出して業務を経験させるジョブローテーション制を敷くなど、利用部門との密なコミュニケーションを図る工夫を凝らすケースもある。それでも、CIOをはじめとする企業の情報システム担当者に話を聞くと、利用部門とのコミュニケーション不足を課題に挙げるケースは依然として多い。

 情報システム部門と現場の利用部門が「和解」する術はないのか。

 有力な手段になりそうな技術がある。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)だ。定型的なPC操作を記録し人間に代わって実行し、ホワイトカラーの業務の生産性や品質を高めるソフトウエアやサービスのことだ。大量のデータを繰り返し入力したり転記したり、あるいは比較したりといった作業を自動化する。