年末調整の時期である。勤務先から「扶養控除等申告書」が配布され、提出を求められた方も多いだろう。

 ビジネスパーソンには毎度おなじみの書類だが、今回配布された扶養控除等申告書には、これまでのものとは大きな違いがある。マイナンバー(個人番号)の記載欄が新設されていることだ。本人のほかに、控除対象の配偶者・扶養親族の欄にもマイナンバーの記載欄が設けられ、企業などの給与支払者の欄にもマイナンバーまたは法人番号を記載する欄が追加されている。

 おりしも世帯単位でのマイナンバーの通知が10月に始まり、中にはすでに通知カードを受け取った人もいるはずだ。早速、自分や家族のマイナンバーを扶養控除等申告書に記入したくなるかもしれないが、まずは勤務先の指示をきちんと確認する必要がある。今回勤務先に提出する「平成28年(2016年)分」の申告書は、マイナンバーの記載欄はあるものの、2015年中に勤務先に提出する場合は記載が義務付けられていないからである。

 マイナンバーを記載した書類やファイルは「特定個人情報」となり、企業などが扱う際には特定個人情報保護委員会が定める「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン」に沿って、「安全管理措置」などを施すことが求められる。つまり、安全管理措置などの整備が終わっていない企業が、マイナンバーが記載された扶養控除等申告書をうっかり受け取ると、ガイドライン違反になってしまう。

 従業員が2015年中に提出する扶養控除等申告書にマイナンバーを記載すること自体は問題ない。だが、記載は義務ではないため企業側が従業員に強制することはできないし、企業が従業員にマイナンバーの記載を求める場合は申告書を安全管理措置に従って取り扱わないと処分の対象になる恐れがある。このため、今回の扶養控除等申告書の提出にあたって、「マイナンバーを記載しない」ように従業員に注意喚起している企業も少なくないようだ。