政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部の新戦略推進専門調査会の下に置かれたマイナンバー等分科会(座長:金子郁容慶応大学大学院教授)が、2014年11月11日に会合を再開した。5月の「中間とりまとめ」では、マイナンバーの利用範囲の拡大について「秋頃をめどに検討状況を政府CIO(内閣情報通信政策監)に報告する」としていた。その“宿題”の提出期限が来たのが一つのきっかけである。

 マイナンバー法では、マイナンバー(個人番号)の利用範囲を社会保障・税・災害対策の3分野に限っている。民間での利用はもちろん、行政機関であっても、これら3分野以外でマイナンバーを利用するためには、利用分野を定めた「別表第一」を法改正によってあらかじめ改訂しておく手続きが必要となる(自治体は条例による利用も可能)。

 もちろん、マイナンバー制度の設計過程では、幅広い利用分野での効果を想定していた。しかし、政府による国民監視や深刻なプライバシー侵害・悪用などへの不安を和らげ、着実に法案成立・制度施行にこぎ着けるためには、利用分野を限定して導入するのが得策との判断が働いた。

 その後、2013年5月にマイナンバー法が成立し、2016年1月の施行が見えてきたことから、政府CIOの指示により、制度導入の効果をさらに引き出すために利用分野の拡大をあらためて検討することになった。マイナンバー法の附則第6条に、「施行後3年をめどに利用範囲の拡大を検討する」と明記されていることが根拠になっている。

 分科会の5月の中間とりまとめは、公共性が高く、国・地方・民間の連携によって大きなメリットが期待できる5つの事務分野を掲げた。具体的には、(1)戸籍事務、(2)旅券(パスポート)事務、(3)預貯金口座への付番、(4)医療・介護・健康情報の管理・連携、(5)自動車検査登録事務である。これら5分野について、内閣官房と関係府省が協力して、自治体や民間の意見も踏まえながら、効果や課題を検討し、政府CIOに報告することになっていた。