とある朝、都内某社にうかがったところ、その会社に勤める知人(A氏とする)にばったり会った。手にはドーナツ型のクッションが。

 「いやいや、変なところを見られちゃったなあ」と苦笑するA氏。技術者である彼は最近仕事がとみに忙しく、デスクで長時間作業をしているため、尾てい骨がイスの座面ですれて、かなり痛むのだそう。痛みの緩和のため、ドーナツ型クッションが手放せなくなった、とのことだった。

 「座りっぱなしだと、どうしても腰にきますね。ちなみに××(ある疾患名)ではありませんよ」との言葉を残して、A氏は去って行かれた。

 ここ数年、ワークスタイル変革に取り組む企業が増え、在宅勤務やモバイルワークのための環境を整えている。また社内の座席をフリーアドレスにして、毎日違った場所で仕事ができるようにしている企業もある。

 こうした取り組みが、「場所」に柔軟性を持たせる水平型の型のワークスタイル変革とするならば、「垂直」方向にも柔軟性があればいいのに。A氏と会ったあと、そう思った。座りっぱなしでなく、立ったり座ったりしながら仕事できる環境があれば、腰への負担はかなり緩和されるはず。それもまた柔軟な働き方には必要なことではないか。

1万2000人のデスクが上ったり下りたり

 と思っていたら、まさにそれを実践している会社があった。楽天である。2015年9月末に移転を完了した新オフィス「楽天クリムゾンハウス」では、社員約8000人が、自由に高さを変えられるデスクで仕事をしているのだという。