「同期は100人くらいいますが、もう半分は辞めました。営業も開発も。仕事のプレッシャーがきつくてメンタルヘルス不調になって、会社を休む日が続いても、職場の人たちは誰も連絡を取らない。まあ、同期の僕らはメールしたり電話したりしますが。それである日、退職届がメールかなんかで送られて来たら、翌週からは別の人がそいつの机に座っている。そんなことに繰り返しで慣れっこになってしまいましたよ」

 もう10年前になるが、大手SIer勤務の20代の社員からこんな話を聞いたことがある。今ほどにはメンタルヘルスの問題が認知されていない時期だったが、かなり衝撃を受けた。

 仕事のプレッシャーからメンタルヘルス不調になる社員がそんなに多いことも驚きだったが、それ以上にショックを受けたのが職場の対応だ。上司も同僚も、メンタルヘルス不調者を支援せず、厄介者として切り捨てようとしているかのように感じた。

 それから月日が経ち、今やこうした職場は全く珍しくなくなった。メンタルヘルス不調はあらゆる業界の共通課題だ。「不調者にどう声を掛ければいいか分からない」「自分の気遣いがかえってプレッシャーになるのではないか」「心の病は医者しか治せない」。身近にメンタルヘルス不調者が出ると、心の中でこんな言い訳をして当たらず障らず。自分にも経験がある。

 そんな時代に警鐘を鳴らす言葉がある。

 「あらゆる組織が『人が宝』と言う。ところが行動で示している組織はほとんどない」

 言葉の主は経営学の巨人、ピーター・ドラッカー氏。2000年に出版した「プロフェッショナルの条件」にこう記している。