あらかじめ断っておくが、タイトルの「アマゾン」はもちろん米アマゾン・ドット・コムのことだが、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の話ではない。アマゾンの“祖業”であるEC(電子商取引)事業のほうである。今、アマゾンのECサイトは絶好調で、成長の限界など来るはずがないように思えるが、少なくとも日本においては限界、もう少し詳しく言うと物理的限界が目の前にはっきりと見えている。

 アマゾンと言えば、世界中の小売業にとっては自社の事業を根底から掘り崩す、恐るべき存在だ。こうした存在を今風の言い方では「ディスラプター(破壊者)」と呼ぶ。米国では今、様々な産業からディスラプターとして恐れられる新興IT企業を続々と輩出している。よく例に出されるのが、個人間のライドシェアを手掛ける米ウーバーテクロノジーズや、民泊仲介の米エアビーアンドビーで、世界中のタクシー業界やホテル業界から恐れられ、目の敵にされている。

 旧来のIT企業からすると、ウーバーやエアビーアンドビーを「IT企業」と認めがたいだろうが、世間ではIT企業として認知されている。というか、デジタルの時代はIT産業と他産業の垣根が溶解し、IT企業といわゆる「ユーザー企業」の区別もつかなくなる。これからはIT企業がどんどん「お客様のビジネス領域」に土足で踏み込んでくるだろう。ウーバーやエアビーアンドビーはデジタルの時代の申し子と言ってよい。

 アマゾンはその元祖的存在であり、格安で新ビジネスを起業できるクラウドを提供することで“後輩の”ディスラプターを育んだ。そう言えば、アマゾンは設立間際の1990年代にはECサイトを運営するネット企業と見なされていたが、AWSのリリース以降は完全なIT企業だ。まさかIT企業として認めない人はもういないだろうと思っていたが、日本のIT業界にいた! ただ、この事を書き出すと違う話になるので、別記事で確認していただきたい。

 そのアマゾンのディスラプターぶりだが、やはり凄まじい。最近の話題では玩具販売大手の米トイザラスが、ECに顧客を奪われたことなどが原因で経営破綻した。トイザラスと言えば、他の玩具販売店を駆逐することで急成長した企業。ECが普及する前には、トイザラス自身がディスラプターだった。その玩具業界の元祖ディスラプターも、アマゾンなどによってディスラプション(破壊)されてしまったのだ。