1年ほど前から「動線分析」に注目し、現場での取り組みを取材している。動線分析とは、限定したエリア内を移動した人間の軌跡をデータ化して収集し、それらを見える化することで現場の課題を洗い出す分析手法だ。店舗での来店客や店員の動線、倉庫や工場での作業員や搬送車の動線などあらゆる現場で利用されている。

 例えば、店舗内の店員の動きを動線分析するケースでは、課題として店員のムダな動きを洗い出せる。けれども、店員に限らずほとんどの人がそうだと思うが、自分がムダな動きをしているとは思っていないものだ。店舗の業務は、接客やレジ打ち、欠品のチェック、商品の補充、在庫のチェック、不足品の発注、入荷検品など多岐にわたる。店員は効率良く動き回っていないと、業務が回らないほど忙しい。

 だとすれば、店舗で店員の動きを動線分析することは、意味がないことのように思える。そこで、九州地方でホームセンターの「グッデイ」を運営する、嘉穂無線の取り組みを紹介したい。ムダな動きなどないように思っても、実は様々な課題や改善の余地を見つけ出せることが、分かってもらえるはずだ。

店員の動きの偏りがひと目で分かる

 嘉穂無線が動線分析を実施したのは、同社が展開する63店舗のうちの1つ「グッデイ大野城店」である。店舗は本館と別館に分かれていて、本館は2階建て、別館は1階建てになっている。本館は1階部分が店舗で、商品の搬入口や倉庫、事務所などのバックヤードを2階に配置している。