いよいよマイナンバーの「通知カード」の発送が始まった。11月末までには全世帯に簡易書留で届くはずである。中にはすでに通知カードを受け取った方もいるかもしれない。

 10月5日のマイナンバー法の一部施行と前後して、マイナンバー制度に関わる新しい情報が政府から続々と発信されている。一方で、マイナンバー制度に関連した様々な話題が世間を騒がせてもいる。

 制度の利活用や今後の制度のあり方に影響を及ぼしそうな3つのトピックスについて、気になる点や役に立つであろう事項をまとめた。

厚生労働省の収賄事件は防げたか

 厚生労働省の情報政策担当参事官室の室長補佐が10月13日に収賄容疑で警視庁に逮捕された(関連記事)。同省がマイナンバー制度の導入に伴う社会保障分野のシステム改修事業として2011年に実施した企画競争入札の際に、特定の企業に便宜を図り現金を受け取った疑いである。マイナンバー制度施行直後のタイミングだったこともあり、メディア各社が“マイナンバー汚職”として大きく取り上げている。厚労省は10月21日午後に、塩崎大臣を本部長とする監察本部会議で対応を協議する。

 事件をきっかけに、マイナンバー制度の導入に伴う政府のシステム構築・改修事業全体に疑いの目が向けられることになってしまった。マイナンバー制度に関わる政府のシステム投資は、2012年度から2018年度ころまでで総額2656億円を見込んでいる(政府資料)。同期間の政府全体のシステム投資額9195億円の28.9%を占める。特に、投資が集中した2014年度は1353億円(政府全体のシステム投資額の59.4%)、2015年度は706億円(同40.0%)、2016年度は531億円(同37.7%)と、政府のシステム投資額を大きく押し上げた。

 マイナンバー関連システムの政府投資は、事業件数が多く総額も大きいだけに、贈収賄を誘発しやすいといえる。各府省は年度ごとに事業単位で資金の流れを明示した「行政事業レビューシート」を公表しているほか、システム投資については専用サイト「ITダッシュボード」を設けて情報公開に努めてもいる。だが、システム投資の最適化、無駄の排除の事後チェックには有用であっても、贈収賄へのリアルタイムのけん制には必ずしもつながらない。

 事件の再発防止には、職員に対するコンプライアンス再教育とともに、特定の職員に調達関連事務が集中したり長期にわたって担当し続けることがない体制面の対策が欠かせない。財政難の中で人員の増強が難題であることは間違いないが、マイナンバー制度の中核システムの整備を担う内閣官房が産学からITシステムの複数の有識者を非常勤の補佐官として任用して調達事務を実施したように、けん制が効く見識を持った外部の専門家の目を入れることは少なくとも必須と言えるだろう。