米Microsoftは2017年10月18日に全世界でWindows 10の大幅アップデート「Fall Creators Update」を提供開始した。新しいノートパソコン「Surface Book 2」も同時に発表して攻勢を強める陰で、ひっそりと幕を引かれた製品がある。Microsoft製のスマートフォン「Windows Phone」だ。現在は「Windows 10 Mobile」というのが正式な製品名となっているようだが、今回は歴代のものを含めてあえてWindows Phoneと呼ばせてもらう。

製品担当者が「終結」宣言

 筆者はWindows Phoneと浅からぬ縁がある。登場した頃はWindows分野を担当していたこともあって注目していたし、Windowsの担当を外れてもずっと気にかけていた。実機も、日本で発売される前に香港で入手するなど、これまでに何台も端末を購入してきた。そこで、これまでの流れを振り返ってみると、Windows Phoneが失敗した原因は大成功したWindowsにこだわる「イノベーションのジレンマ」があったと感じた。

 いちおう確認しておくと、MicrosoftがWindows Mobileの終了を正式に発表したわけではない。だが、Windows 10 Mobileを含むWindows 10全般を担当する副社長のJoe Belfiore氏が「セキュリティホールやバグの修正はするものの、新機能の開発を予定していない」と公式Twitterアカウントで発言した。スマホの世界で新規開発をやめるということは、事実上の終結宣言がしたようなものだ。

 兆候は少し前からあった。Microsoftの創業者であるBill Gates氏も、米国のテレビ番組で使っているスマホをそれまでのもの(おそらくWindows 10 Mobile)からAndroidに乗り替えたと発言。Android上でMicrosoft製のアプリを使っているとしていた。

Windows 10担当のJoe Belfiore副社長が公式Twitterで新規機能の開発をしないことを宣言した
Windows 10担当のJoe Belfiore副社長が公式Twitterで新規機能の開発をしないことを宣言した
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終始ちぐはぐだった日本市場

 登場してから「成功」と呼べる時期がほとんどなかったWindows Phoneだが、中でも日本市場ではちぐはぐな対応が目立った。Windows Phoneを搭載した端末が欧米で登場したのは2010年11月。このWindows Phone 7.0搭載端末は韓国Samsung、台湾HTC、フィンランドNokiaなどの各社から登場したが、日本ではいつまで経っても提供されなかった。

 「日本では永遠に登場しないのでは」と思っていたところ、2011年8月になって突如として「IS12T」がKDDI(au)から登場。しかも、2011年9月に登場する次期版のWindows Phone 7.5を1カ月も早く搭載するという、それまでの消極さがウソのような積極的な姿勢だった。